特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分である薬事法所定の製造等の承認を受けることが必要であるために「特許発明の実施をすることができなかった期間」は、右承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、右承認が申請者に到達することにより処分の効力が発生した日の前日までの期間である。
特許権の存続期間の延長登録の理由となる薬事法所定の製造等の承認を受けることが必要であるために「特許発明の実施をすることができなかった期間」
特許法(平成5年法律第26号による改正前のもの)67条3項,特許法(平成5年法律第26号による改正前のもの)67条の3第1項,薬事法14条,薬事法23条
判旨
特許権の存続期間の延長登録の理由となる薬事法上の承認は、申請者に到達した時にその効力が発生する。したがって、特許発明の実施をすることができなかった期間の終期は、当該承認が申請者に到達した日の前日である。
問題の所在(論点)
特許法上の存続期間延長の理由となる「処分」(薬事法上の承認)の効力発生時期はいつか。また、それに伴い「特許発明の実施をすることができなかった期間」の終期をいかに解すべきか。
規範
特許法(旧法)67条の3第1項4号にいう「特許発明の実施をすることができなかった期間」の終期は、行政処分としての性質を有する承認の効力が発生した日の前日である。承認の効力は、特別の定めがない限り、当該承認が申請者に到達した時、すなわち申請者が現実にこれを了知し、または了知し得べき状態に置かれた時に発生する。
重要事実
特許権者F(上告人が承継)から実施許諾を受けたG社は、本件特許発明に係る医薬品につき薬事法上の承認を得た。承認書に記載された日付は平成3年6月28日であったが、G社が実際にこれを受領したのは同年7月11日であった。Fは、受領日の前日(7月10日)を終期として2年12日間の延長登録出願をしたが、特許庁は「承認書記載日の前日」を終期とすべきであり、期間を超えているとして拒絶審決を下した。
あてはめ
薬事法上の承認は、申請者に製造業等の許可を受け得る地位を与える行政処分である。告知方法の規定がない以上、一般的な行政処分の法理に従い、申請者への到達(了知可能な状態)によって効力が生じる。本件では、承認書に記載された日付(6月28日)に当然に効力が生じるわけではなく、G社に承認が到達した時をもって実施不能状態が解除される。したがって、その到達日の前日までが「実施をすることができなかった期間」に該当する。
結論
処分の効力は申請者に到達した時に発生するため、期間の終期は「承認が申請者に到達した日の前日」となる。到達日を確定せずに、承認書記載日の前日を終期として期間超過を理由に退けた審決は違法であり、取り消されるべきである。
実務上の射程
行政処分の効力発生時期に関する一般原則を特許法の期間計算に適用した事例。答案上では、条文に規定のない期間の計算基準(始期・終期)が問題となる場面で、行政処分の性質から「到達時」を導く論理として活用する。特に、薬事承認等の行政規制による実施不能期間の確定において、処分の実質的効力発生を重視する判断枠組みとして重要である。
事件番号: 平成10(行ツ)81 / 裁判年月日: 平成11年4月22日 / 結論: 棄却
無効審決取消訴訟の係属中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には、当該無効審決は取り消されなければならない。