行政処分に対する異議の申立が、申立期間経過後約三年一〇ケ月を経てなされ、しかもとくにこれを受理すべき宥怒事由も存しない場合には、異議決定庁が申立を受理し棄却の決定をし、これに対する訴願を訴願庁が受理し棄却の裁決をしたとしても、原処分はすでに確定しているもとの解すべきであるから、右裁決の取消を求める法律上の利益は存しない。
異議申立期間経過後宥怒事由がないにかかわらず異議・訴願が受理され、棄却の裁決がなされた場合と右裁決の取消を求める法律上の利益の有無
自作農創設特別措置法7条,行政事件訴訟特例法2条,行政事件訴訟特例法5条
判旨
不適法な異議申立てに対し実体審理を経てなされた裁決は、先行する処分の確定を妨げず、その取消しを求める訴えの利益を欠く。行政庁には、期間経過後の不適法な異議申立てを裁量により受理する権限は認められない。
問題の所在(論点)
法定の不服申立期間を徒過してなされた不適法な申立てに対し、行政庁が誤って受理し実体的な裁決をした場合、当該裁決の取消しを求める訴えの利益が認められるか。また、期間徒過後の申立てを受理する裁量が行使できるか。
規範
行政処分に対する異議申立てが法定期間を徒過してなされた場合、特段の宥恕事由がない限り、行政庁の裁量によってこれを受理し実体審理を行うことは許されない。また、期間徒過により確定した処分の効力は、その後の不適法な不服申立てに対する裁決の取消判決によって影響を受けるものではないため、当該裁決の取消しを求める訴えの利益(行政事件訴訟法9条1項参照)は認められない。
重要事実
上告人は、農地買収計画に対し、法定の異議申立期間を約3年10ヶ月経過した後に異議を申し立てた。農業委員会はこの申立てを却下せず受理し、実体審理の上で棄却決定を行い、続く訴願(現在の審査請求に相当)においても実体審理を経て棄却裁決がなされた。上告人はこの裁決の取消しを求めて出訴したが、買収計画自体は期間徒過により既に確定していた。
あてはめ
本件では、異議申立期間を大幅に徒過しており、宥恕事由も存在しないため、農業委員会に申立てを受理する裁量はない。したがって、誤って実体審理がなされたとしても、買収計画は期間徒過により既に確定している。仮に本件訴願裁決が取り消されたとしても、既に確定した買収計画の効力に消長を来すことはなく、法が予想しない事態を招くことになる。よって、裁決の取消しによって得られる法的利益は存在しないといえる。
結論
上告人は本件裁決の取消しを求める法律上の利益を有しないため、訴えは却下されるべきである(結論として控訴棄却を維持)。
実務上の射程
期間徒過後の不服申立てに対する実体裁決(いわゆる「誤った受理」)があっても、原処分の出訴期間の起算点は移動せず、原処分の確定を妨げないとする法理を示す。行政救済制度における期間制限の厳格性と、訴えの利益の判断において先行処分の確定状況を重視する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和31(オ)504 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁決の取消しを求める訴訟において、前提となる行政処分が当然無効であるとしても、そのことは裁決の適法性を左右するものではなく、裁決の取消事由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収計画に対して異議申立ておよび訴願を行ったが、被上告人(県知事)は訴願期間経過後の不適法なものであると…