旧所得税法(昭和二二年法律第二二号)による処分で、同法所定の再調査の決定および審査の決定を経たものに対する取消訴訟は、その原処分または審査の決定を対象として提起すべく、中間的な再調査の決定を対象とする訴訟は許されないものと解すべきである。
旧所得税法(昭和二二年法律第二二号)による処分で再調査の決定および審査の決定を経たものにつき、再調査の決定を対象として提起した取消訴訟の適否
旧所得税法(昭和22年法律第22号)51条,行政事件訴訟特例法1条
判旨
旧所得税法に基づく再調査の決定および審査の決定を経た処分に対する取消訴訟において、中間的な再調査の決定を対象とすることは許されず、原処分または最終的な審査の決定を対象とすべきである。
問題の所在(論点)
1. 再調査の決定および審査の決定を経た場合において、中間的な再調査の決定を取消訴訟の対象とすることができるか(訴えの適格)。2. 青色申告承認の取消通知において、文言の不備や遡及原因の具体的日時の欠如が処分の効力に影響を及ぼすか。
規範
行政不服申立手続において、再調査の決定および審査の決定を経た場合、再調査の決定は中間的な判断にすぎない。そのため、取消訴訟の対象は、原則として原処分または不服申立手続における最終的判断を示す審査の決定とすべきであり、中間的な再調査の決定を対象とする訴訟は不適法となる。
重要事実
上告人は、税務当局から昭和31年分の青色申告承認の取消処分を受け、これに対し再調査の請求および審査の請求を行った。再調査の決定および審査の決定を受けた後、上告人は「再調査の決定」自体の取消しを求めて出訴した。また、上告人は、取消通知書の記載が「青色申告申請に対する取消」となっており不完全であることや、遡及取消の際に原因事実の発生日時が通知されていないことを理由に、処分の無効・違法を主張した。
事件番号: 昭和36(オ)409 / 裁判年月日: 昭和37年12月26日 / 結論: 棄却
一 審査決定の通知書に「貴社の審査請求の趣旨、経営の状況、その他を勘案して審査しますと、芝税務署長の行つた青色申告届出承認の取消処分は誤りがないと認められますので、審査の請求には理由がありません」と記載しただけでは、理由附記としては不備であつて、審査決定は違法として取り消すべきである。 二 原処分と原処分を維持した審査…
あてはめ
1. 旧所得税法は審査の決定を経た後の出訴を原則としており、再調査の決定を対象とする定めがない。再調査の決定に瑕疵があっても、審査の決定で補正されれば取消しは無意味であり、瑕疵が継続しているなら最終判断たる審査の決定を争うのが適切である。したがって、本件再調査決定の取消請求は不適法である。2. 通知書に「申請に対する取消」とあっても、承認の取消処分を指すことは理解可能であり、処分の同一性を損なわない。また、旧所得税法26条の3第10項は特定の年分を表示すれば足り、取消原因の具体的発生日時までの通告を求めていない。
結論
1. 再調査の決定を対象とする訴えは不適法であり、却下されるべきである。2. 青色申告承認取消処分およびこれに基づく更正処分は適法である。
実務上の射程
行政事件訴訟法における「原処分主義」の考え方を補強する判例である。審査請求と再調査の請求が併存する制度下において、便宜的な中間処分にすぎない再調査決定を切り出して争うことは、訴訟経済および紛争の抜本的解決の観点から否定される。答案上では、取消訴訟の対象(行訴法3条2項)の選択において、先行する不服申立手続がある場合の対象特定を論じる際に参照すべきである。
事件番号: 昭和39(行ツ)33 / 裁判年月日: 昭和42年4月21日 / 結論: 棄却
一 青色申告書提出承認の取消でも、法人税法(昭和二二年法律第二八号)第二五条第八項第一号によるものと同項第三号によるものとは、それぞれ別個の取消処分を構成するものと解すべきである。 二 法人税法(昭和二二年法律第二八号)第二五条第八項第三号による取消処分を不服とする同法第三五条(昭和三七年法律第六七号による削除前)の審…
事件番号: 昭和47(行ツ)76 / 裁判年月日: 昭和49年6月11日 / 結論: 棄却
旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項による青色申告書提出承認取消処分の通知書には、右取消が同条八項各号のいずれによるものであるかを附記するのみでは足りず、取消の基因となつた事実をも処分の相手方において具体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならない。
事件番号: 昭和43(行ツ)114 / 裁判年月日: 昭和45年3月24日 / 結論: 棄却
労働基準法(昭和三一年六月法律第一二六号による改正後)八五条による災害補償に関する行政官庁の審査の結果は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない。