原判決認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいて、土地の賃料として金員(一三三二万余円)が供託され、また、右供託金につき賃貸人(土地所有者)に対する税金滞納処分により強制的に還付手続が行なわれたとしても、一部弁済の効力を生ずるものとはいえない。
供託金につき一部弁済の効力が否定された事例
民法493条,民法494条
判旨
債務者が提供した金額が債務の全額に満たない場合、原則として債権者はその受領を拒絶でき、一部弁済としての効力も生じない。また、一部の金員を別途受領したとしても、不足する供託金について当然に一部弁済の効力を認めるべきではない。
問題の所在(論点)
債務の一部に満たない金額の供託がなされた場合において、債権者がこれを受領拒絶したとき、一部弁済としての効力が認められるか。また、別途一部の金員を受領していた事実がその判断に影響を及ぼすか。
規範
債務の一部提供は、特段の事情がない限り、債務の本旨に従った履行の提供とは認められない。そのため、債権者がその受領を拒絶した場合には、遅滞の責任を免れることはできず、一部弁済としての効力も発生しない。
重要事実
上告人は、被上告人に対し、本件土地の賃貸借に基づく賃料等の支払義務を負っていた。上告人は1332万2812円を供託したが、これが本来支払うべき債務の全額に不足していた。他方で、上告人は別途13万4206円を被上告人に支払っており、被上告人はこれを受領していた。上告人は、供託金と受領済みの金額を合わせれば一部弁済の効力が認められるべきであると主張して争った。
あてはめ
本件における1332万2812円の供託は、債務の全額に達していない。債権者は全額の提供でない限りこれを受領する義務はなく、拒絶は正当である。また、別途13万4206円を受領していたとしても、その事実によって直ちに不足する供託部分について債務の本旨に従った提供があったとみなすことはできない。本件土地の賃貸借成立の経緯や管理・使用の経過等の諸事情を考慮しても、一部提供をもって有効な弁済と認めるべき特段の事情は存在しない。
結論
本件供託は一部弁済としての効力を有しない。したがって、上告人の債務不履行責任は免れず、上告を棄却する。
実務上の射程
弁済の提供(民法493条)における「債務の本旨に従った」提供の厳格性を確認する事例である。実務上、1円でも不足すれば原則として受領拒絶が可能であり、供託による免責も生じないという原則を徹底する際に引用される。一部受領があっても残部についての拒絶権は失われない点も重要である。
事件番号: 昭和33(オ)28 / 裁判年月日: 昭和33年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料の一部を供託しても、別段の事由がない限り、その一部に相当する賃料債務の消滅という免脱の効力は生じない。 第1 事案の概要:本件家屋の賃料は、昭和25年8月に月額5000円へと適法に増額された。しかし、賃借人である上告人は、この増額後の金額に満たない額の弁済供託を行い、賃料債務の消滅を主張して争…