甲が乙に対する債権者として、乙の丙に対する所有権に基づく土地明渡請求権を代位行使する場合にあつては、当該土地の所有権の帰属につき甲丙間に対抗問題を生ずることはない。
債権者代位権行使の場合の対抗問題
民法177条,民法423条
判旨
譲渡担保契約において、債権者が契約の約旨に基づき適法に担保不動産を第三者に売却処分した後は、債務者は遅滞した債務を弁済して目的物を取り戻すことはできない。また、債権者の代位債権者に対し、債務者は自己への登記欠缺を理由に対抗要件の不備を主張することはできない。
問題の所在(論点)
1. 譲渡担保権者が約旨に従い目的物を処分した後に、債務者が弁済供託によって目的物を取り戻すことができるか。 2. 債権者代位権を行使する第三者に対し、債務者は当該第三者が対抗要件(登記)を備えていないことをもって請求を拒めるか。
規範
譲渡担保において、債権者が契約の約旨に従い適法に目的物を処分したときは、これにより債務者の受戻権は消滅する。この処分がなされた後は、債務者が債務の全部を弁済供託したとしても、目的物の所有権を回復し、または処分行為の無効を主張することはできない。また、債権者の有する登記請求権をその債権者が代位行使(民法423条)する場合、債務者は代位債権者自身の登記の欠缺を理由に拒絶することはできない。
重要事実
債務者A1は、債権者Eとの間で本件土地につき譲渡担保契約を締結した。A1の債務不履行後、Eは契約の約旨に基づき、昭和32年2月に本件土地を第三者(被上告人)に売却処分した。その後、A1は昭和34年10月に債務を弁済供託し、所有権の回復を主張した。被上告人は、EのA1に対する登記請求権および建物収去土地明渡請求権を代位行使して、A1および建物居住者A2に対して請求を提起した。
事件番号: 昭和42(オ)1279 / 裁判年月日: 昭和46年3月25日 / 結論: 破棄差戻
貸金債権担保のため債務者所有の不動産につき譲渡担保契約を締結し、債務者が弁済期に債務を弁済すれば、右不動産を債務者に返還するが、弁済をしないときは右不動産を債務の弁済に代えて確定的に債権者の所有に帰せしめるとの合意のもとに所有権移転登記が経由されている場合において、債務者が弁済期に債務の弁済をしないときは、債権者は、目…
あてはめ
1. 本件譲渡担保契約の約旨に基づき、Eが昭和32年に適法に売却処分を完了している以上、その時点でA1の受戻権は消滅したといえる。したがって、その2年後になされた弁済供託は、既に消滅した権利の回復を求めるものであり、失当である。 2. 被上告人の請求は、あくまで債権者EがA1に対して有する登記請求権等を代位行使するものである。これはEの権利の行使であって、被上告人自身の所有権に基づく物権的請求ではない。したがって、被上告人自身が対抗要件を備えている必要はなく、A1やA2が登記の欠缺を主張することは認められない。
結論
債権者が適法に担保物を処分した後は、債務者は弁済による取戻しを主張できず、また、代位行使による登記請求等に対しても自己の対抗要件具備の有無を問わずこれに応じる義務がある。
実務上の射程
譲渡担保における「処分清算型」の効力を認めるものであり、処分後の受戻権消滅の時期を画定する。また、債権者代位権(423条)の行使において、代位債権者が「第三者」(177条)としての対抗要件を備える必要がないという法理を、譲渡担保の実行局面においても維持している。
事件番号: 昭和36(オ)1071 / 裁判年月日: 昭和37年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地譲渡担保において、譲渡担保権者から土地を取得した者に対し、借地人が建物登記による対抗力を具備していても、譲渡担保権者が賃借権を承認した事実がない限り、賃借権を対抗することはできない。 第1 事案の概要:Dは本件土地を株式会社E商店に譲渡(事案上、譲渡担保契約を基礎とする)し、所有権移転登記を完…
事件番号: 昭和60(オ)1496 / 裁判年月日: 平成元年2月7日 / 結論: 破棄差戻
借地上の建物に代物弁済を登記原因とする所有権移転登記がされた場合、右登記が債権担保の趣旨のものであつても、土地賃借人は、その後右土地の所有権を取得した第三者に対し土地賃借権を対抗することができない。
事件番号: 昭和40(オ)386 / 裁判年月日: 昭和40年10月22日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地上の建物を取得した場合でも、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しないうちに土地賃貸借契約が賃料不払により解除されたときは、右第三者は、建物買取請求権を有しない。