貸金債権担保のため債務者所有の不動産につき譲渡担保契約を締結し、債務者が弁済期に債務を弁済すれば、右不動産を債務者に返還するが、弁済をしないときは右不動産を債務の弁済に代えて確定的に債権者の所有に帰せしめるとの合意のもとに所有権移転登記が経由されている場合において、債務者が弁済期に債務の弁済をしないときは、債権者は、目的不動産を換価処分するかまたはこれを適正に評価することによつて具体化する価額から債権額を差し引き、残額を清算金として債務者に支払うことを要するのであつて、債権者が、この担保目的実現の手段として、債務者に対し右不動産の引渡ないし明渡を請求する訴を提起した場合に、債務者が清算金の支払と引換えにその履行をなすべき旨を主張したときは、特段の事情のある場合を除き、債権者の右請求は、債務者への清算金の支払と引換えにのみ認容されるべきものと解するのが相当である。
債務者が弁済期に債務の弁済をしないときは弁済に代えて確定的に目的不動産の所有権を債権者に帰せしめる旨の譲渡担保契約における債権者の清算義務および右清算義務と債務者の不動産引渡義務との関係
民法369条(譲渡担保),民法482条
判旨
不動産の譲渡担保権者が弁済期後の所有権主張に基づき引渡しを求める際、債務者が清算金の支払との引換履行を主張したときは、特段の事情がない限り、清算金の支払と引換えにのみ認容される。
問題の所在(論点)
不動産譲渡担保において、債務者が弁済期に不履行となった場合、債権者の明渡請求に対し、債務者は清算金の支払との引換履行を主張し得るか。
規範
譲渡担保契約において、債務者が弁済期に債務を弁済しない場合、債権者は目的物件を換価処分するか適正に評価し、その価額から自己の債権額を差し引いた残額を清算金として債務者に支払う義務を負う。債権者が担保目的実現のために不動産の引渡しを求める訴訟において、債務者が清算金支払との引換履行を主張したときは、特段の事情がない限り、引換給付判決をなすべきである。
事件番号: 昭和40(オ)1270 / 裁判年月日: 昭和42年5月26日 / 結論: 棄却
甲が乙に対する債権者として、乙の丙に対する所有権に基づく土地明渡請求権を代位行使する場合にあつては、当該土地の所有権の帰属につき甲丙間に対抗問題を生ずることはない。
重要事実
債権者は貸金債権の担保として、債務者所有の土地につき、弁済期に不履行があれば所有権を確定的に取得する合意(帰属清算型譲渡担保)の下、所有権移転登記を経由した。弁済期経過後、債権者は土地所有権に基づき、債務者に対し建物収去土地明渡しを求めた。当時、土地時価(約349万円)は債務額(約246万円)を上回っていたが、債務者が時価の不当性を争っていたにもかかわらず、原審は清算金の要否や引換履行を検討せず債権者の請求をそのまま認容した。
あてはめ
本件土地の譲渡担保契約時における時価(349万余円)は債務額(246万余円)を超過しており、差額の清算金が発生する余地がある。債務者が原審において時価の相当性を争い、安価で所有権が移転することに反論している点は、実質的に清算金の支払を求める主張を含んでいると解される。特段の事情がない限り、債権者の明渡請求は清算金支払義務と表裏の関係にあるため、適切な釈明権の行使を通じて引換履行の合意や主張を確定させるべきである。
結論
債権者による土地明渡請求は、債務者への適正な清算金の支払と引換えにのみ認容されるべきである。
実務上の射程
帰属清算型譲渡担保の実行における清算金支払義務を確立した判例である。答案上では、民法等に規定のない譲渡担保の法的性質(担保権的構成)を前提に、同時履行の抗弁権(533条)の類推適用や信義則を根拠として、引換給付判決を導く際の規範として活用する。
事件番号: 昭和42(オ)1075 / 裁判年月日: 昭和43年2月23日 / 結論: 棄却
法定地上権の地代確定訴訟の係属中、右法定地上権が譲渡され、その後右訴訟の判決が確定した場合においては、その譲受人は、右判決によつて譲渡人と地主との間で確定された右譲受当時の地代を、譲受の時に遡つて支払うべき義務を負うものと解すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。
事件番号: 昭和32(オ)177 / 裁判年月日: 昭和35年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済契約が有効と認められるためには、対象物件の価格が当時の貨幣価値を斟酌した債権額とおよそ相応し、両者の間に著しい差異がないことが必要である。また、不法占有者に対する建物収去土地明渡請求は、特段の事情がない限り権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:債務者Dは、被上告学園に対し計15万円…
事件番号: 昭和42(オ)1066 / 裁判年月日: 昭和43年8月2日 / 結論: 棄却
取立払の定のある賃料について、増額請求を受けた賃借人が、賃貸人の一箇月分の賃料の取立にさいしてその全額の支払を拒絶し、その後引続き適正額の賃料の支払をも拒絶する態度を示している等判示事実関係のもとにおいては、賃貸人が客観的に適正とされる額によつて五年分の賃料を自己の住所へ持参して支払うよう催告し、催告期間内に賃借人の住…