売主の支払停止前になされた農地の売買について、知事の許可がなかつたため、買主において右支払停止後破産申立前に所有権移転請求権保全の仮登記を経たが、破産宣告が右仮登記後一年を超えてなされたときは、右仮登記についてもはや破産法第七四条第一項による否認をしえなくなり、買主は、右仮登記に基づいて、破産管財人に対し知事の許可を条件とする本登記を求めることができる。
支払停止後破産申立前になされた仮登記に基づいて破産管財人に対する本登録請求が認められた事例
破産法84条,破産法72条,不動産登記法2条
判旨
農地法上の許可を停止条件とする売買契約に基づき仮登記を終えた買主は、売主の破産後も、破産管財人に対し許可申請手続及び許可を条件とする本登記手続の履行を請求できる。
問題の所在(論点)
農地法上の許可未取得の状態で、買主が仮登記を有している場合、売主の破産手続において破産管財人に対し、許可申請手続及び仮登記に基づく本登記手続を請求できるか。
規範
農地法の許可を要する売買契約は、許可がない限り所有権移転の効力は生じないが、特段の事情がない限り、売主は知事に対する許可申請手続義務及び許可後の所有権移転登記手続義務を負う。この仮登記の効力は破産財団に対しても維持され、買主は破産管財人に対し、当該義務の履行を求めることができる。
重要事実
買主(被上告人)は、売主(D)との間で農地(本件田畑)の売買契約を締結したが、農地法上の知事の許可を未だ受けていなかった。買主は、将来の許可を停止条件とする所有権移転登記請求権を保全するため、本件田畑に仮登記を経由していた。その後、売主について破産宣告がなされ、破産管財人(上告人)が選任された。上告人は、許可がない以上売買は無効であり、本件田畑は破産財団に帰属し他の破産債権者に優先する権利はないと主張して争った。
事件番号: 昭和39(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: その他
現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可を条件として所有権移転登記を請求する訴訟が提起された場合には、裁判所は、宅地としての売買による所有権移転登記の請求についてまで前記条件を付する趣旨か否かを釈明して判断するのが相当である。
あてはめ
農地売買契約は許可なくして直ちに物権変動を生じないが、債権的には有効であり、売主は協力義務を負う。本件において買主が有する仮登記は、破産財団に対する関係でもその効力を有すると解される。したがって、被上告人は破産管財人に対し、許可申請手続を求め得るとともに、許可を条件として仮登記に基づく本登記手続の履行を求め得る。これは直ちに所有権取得を対抗し、または他の債権者に優先する権利を認めるものではなく、条件付権利の保全を認めるものである。
結論
買主は破産管財人に対し、許可申請手続および許可を条件とする本登記手続の履行を請求することができる。
実務上の射程
農地法上の許可待ちの状態での売主破産という場面において、買主が仮登記を備えていれば、破産管財人に対してその後の手続協力を請求できるという実務上の救済を示している。民事執行法や破産法における仮登記の効力に関する基本判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和46(オ)213 / 裁判年月日: 昭和46年6月11日 / 結論: 棄却
甲が、乙との間に、農地法五条所定の知事の許可を条件として乙所有の農地を買い受ける契約をし、これに基づいて所有権移転請求権保全の仮登記を経由し、次いで右売買契約上の買主たる地位を丙に譲渡して、右仮登記につき丙への移転の附記登記をした場合において、丙が、右譲渡につき乙の承諾を得、乙との間に、乙において丙のため宅地転用の許可…
事件番号: 昭和42(オ)429 / 裁判年月日: 昭和42年10月27日 / 結論: 棄却
農地を目的とする売買契約締結後に、売主が目的物上に土盛りをし、その上に建物が建築され、そのため農地が恒久的に宅地となつた等買主の責に帰すべからざる事情により農地でなくなつた場合には、右売買契約は、知事の許可なし完全に効力を生ずると解するのが相当である。
事件番号: 昭和38(オ)1272 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
農地の買主は、その必要があるかぎり、売主に対し、知事の許可を条件として農地所有権移転登記手続請求をすることができる。
事件番号: 昭和36(オ)775 / 裁判年月日: 昭和38年11月12日 / 結論: 破棄自判
知事の許可を条件とする農地の売買契約において、これを転売したときには売主は直接転買のために右許可申請手続をする旨の合意をしても、右合意はその効力を生じない。