(省略)
板付飛行場の建設に伴い小作人に支払われた「離作料」を小作権の放棄とした判断が違法とされた事例
民訴法394条,民訴法186条
判旨
土地の占有を失い、登記も備えていない小作権者は、物権的請求権を行使できない。また、著しく低額な離作料の受領のみをもって、生活の基盤である耕作権を合意解除したと認定するには、特段の事情の検討を要する。
問題の所在(論点)
1. 占有も登記も備えない小作権に基づき、土地の明渡請求(物権的請求)が可能か。 2. 著しく低額な離作料の受領をもって、小作権の放棄(合意解除)を認定できるか。
規範
1. 不動産賃借権(小作権)が、物権または妨害排除請求権を行使し得る債権として認められるためには、当該不動産の占有を有しているか、あるいは対抗要件としての登記を備えていることを要する。 2. 生活の基礎となる耕作権の合意解除の成否については、支払われた金員が対価として著しく低額である場合、単なる受領の事実だけでなく、当時の社会情勢や権利放棄に至る特段の事情を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
小作人である上告人らは、昭和19年、軍による飛行場用地買収に伴い、軍が定めた基準による離作料を受領した。土地所有者(被上告人)と軍との間では売買契約が成立したが、代金支払や登記未了のまま終戦を迎えた。上告人らは、小作権に基づき本件土地の明渡しと金員支払を求めたが、原審は、占有の欠如を理由に明渡しを拒絶する一方、離作料の受領をもって小作契約は合意解除されたと判断した。しかし、支払われた離作料は一般の慣行(土地価格の30〜50%)に比して著しく低額(3分の1から5分の1程度)であった。
あてはめ
1. 上告人らは本件土地の占有を有しておらず、小作権の登記も主張していない。したがって、本件小作権に基づき物権的請求権や妨害排除請求権を行使することはできない。 2. 合意解除の点につき、受領した金員が当時の一般慣行に比して著しく低額である場合、それが全生活の基礎たる耕作権を完全かつ無条件に放棄する代償とみるには慎重な判断を要する。国家総動員体制下の犠牲的行為が求められた情勢を考慮しても、土地所有者には時価相当の代金が予定されていたこととの均衡に照らし、特段の事情の存否を審理せずに合意解除を認めた原審の判断は、審理不尽・理由不備の違法がある。
結論
1. 土地明渡請求については、占有・登記を欠くため認められない(棄却)。 2. 金員支払請求については、合意解除の認定に不備があるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
賃借権に基づく妨害排除請求の要件として、不動産賃貸借の対抗要件(占有または登記)が必要であることを示した。また、権利の放棄という重大な不利益を伴う意思表示の認定において、対価の相当性という客観的事実を重視し、安易な認定を戒める実務上の指針となる。
事件番号: 昭和39(オ)1020 / 裁判年月日: 昭和42年9月26日 / 結論: その他
農地の使用貸借ないし転借にもとづく権利は、昭和二一年一一月二二日以降の分については、地方長官の許可または農業委員会の承認もしくは農地委員会の許可をえなければその効力を生じないから、その成立時期を明確にして、その効力を判定すべきである。