農地の使用貸借ないし転借にもとづく権利は、昭和二一年一一月二二日以降の分については、地方長官の許可または農業委員会の承認もしくは農地委員会の許可をえなければその効力を生じないから、その成立時期を明確にして、その効力を判定すべきである。
農地の使用貸借ないし転借の成立時期の不分明と審理不尽
農地法3条,民訴法394条
判旨
農地の使用貸借または転借による権利の取得は、農地法3条等の所定の許可を得ない限りその効力を生じない。また、農地について適法な耕作権を有しない者が耕作した場合、その耕作物の所有権は土地所有者に帰属する。
問題の所在(論点)
農地法上の許可を得ていない農地の使用借人が収穫した耕作物の所有権は、土地所有者と耕作者のいずれに帰属するか。使用貸借の効力、および無権限の耕作者による収穫物の帰属が問題となる。
規範
1. 農地法3条1項等に基づき、農地の権利移動については農業委員会等の許可を要し、この許可を欠く使用貸借や転借は法的効力を生じない。 2. 農地について適法な耕作権を有しない者が農地を耕作し収穫を得た場合、その耕作物(天然果実)の所有権は、民法89条1項の法理に基づき、収取権限を有する土地所有者(または適法な賃借人)に帰属する。
重要事実
上告人(土地所有者)は不在地主であり、その父の生前から、被上告人(夫婦)が本件農地を実際に耕作していた。父の死後、上告人が農地を相続したが、被上告人らは上告人から無償で農地を借り受ける形で耕作を継続し、収穫物を得ていた。しかし、この使用貸借ないし転借について、農地法(または旧農地調整法)所定の許可を得ていなかった。その後、被上告人ら夫婦の不和を契機に、上告人が収穫物(玄米)の引渡し等を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、被上告人らが農地を使用貸借ないし転借していた事実は認められるが、農業委員会による「耕作の了承」があったとしても、それは法所定の許可(農地法3条等)に代わるものではない。したがって、被上告人らは本件農地について対抗力のある適法な耕作権を取得したとはいえない。適法な耕作権を有しない者が耕作を行った場合、その収穫物の所有権は土地所有者に帰属するというべきである。それゆえ、被上告人らが上告人に対し対抗しうる本権(適法な耕作権)を有することを前提に、収穫物の所有権が被上告人らにあるとした原審の判断は、法令の解釈を誤り審理を尽くしていないといえる。
結論
許可のない農地使用貸借は効力を生じず、適法な耕作権のない者が収穫した耕作物の所有権は土地所有者に帰属する。したがって、上告人(所有者)の請求を排斥した原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
農地法3条の許可が「効力発生要件」であることを前提に、物権的返還請求権(所有権に基づく引渡請求)の成否を論じる際の規範として機能する。また、民法89条1項の「天然果実」の収取権者が誰であるかを判断する際、土地の適法な占有権原(本権)の有無が決定的な要素となることを示す射程を持つ。答案上は、農地の権利移動における許可の要否と、無権限耕作による果実の帰属という二段階の論理構成で活用する。
事件番号: 昭和31(オ)247 / 裁判年月日: 昭和32年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占有保持の訴え(民法198条)において、被告による占有妨害行為が既に消滅している場合には、妨害排除請求の対象となる「妨害」が存在しないため、請求は棄却される。また、占有の訴えにおいては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることはできない(民法202条1項)。 第1 事案の概要:上告人(原告)は昭和…
事件番号: 昭和37(オ)218 / 裁判年月日: 昭和38年5月10日 / 結論: 棄却
農地賃貸借解除の意思表示は、裁判上なされる場合でも、知事の許可を受けていない以上、農地法第二〇条により無効と解する。
事件番号: 昭和33(オ)379 / 裁判年月日: 昭和34年12月10日 / 結論: 棄却
農地の小作権譲渡契約につき臨時農地等管理令第七条ノ二所定の地方長官の許可を受けていなくても、右契約は当然無効ではない。