農地法による未墾地買収にあたり、地上に生立する葡萄の木が買収の対象から除外されたことを理由として、国から右土地の売渡を受けた者の葡萄の木に対する所有権を争う者は、それが買収の対象から除外されたことについて主張・立証責任を負う。
農地法による未墾地買収にあたり地上樹木が買収処分から除外されたことの有無についての主張・立証責任
農地法44条,農地法施行令6条,農地法施行令2条2項
判旨
不動産等の不法占拠者や侵害者は、民法177条の「第三者」に該当しないため、被害者は登記がなくともその所有権を対抗して不法行為に基づく損害賠償を請求できる。
問題の所在(論点)
不法行為に基づき損害賠償を請求する場合において、被害者は登記その他の対抗要件を備えていなければ、侵害をなした加害者に対して所有権を主張できないか(民法177条の「第三者」の範囲)。
規範
民法177条にいう「第三者」とは、不動産に関する物権の得喪変更の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者を指す。これに対し、他人の権利を故意または過失により侵害した不法行為者は、右の「正当な利益を有する者」には当たらない。
重要事実
被上告人(原告)は、土地の買収・売渡処分により、本件土地およびその地上に生立する葡萄の木の所有権を取得した。その後、上告人(被告)らによる故意または過失の行為により、当該葡萄の木の所有権を侵害されたとして、不法行為に基づく損害賠償を求めて提訴した。これに対し上告人らは、被上告人が対抗要件を備えていない以上、所有権を対抗できないと主張して争った。
あてはめ
本件において、被上告人の請求は上告人らによる「故意または過失により本件葡萄の木の所有権を侵害されたこと」を理由とする損害賠償請求である。このような不法行為者は、不動産取引の安全を保護するための登記制度において保護されるべき「正当な利益を有する第三者」には該当しない。したがって、被上告人は登記の有無にかかわらず、上告人らに対して所有権の取得を主張することができる。
結論
不法行為者との関係では登記は不要であり、被上告人は登記なくして所有権を対抗し、損害賠償を請求できる。原判決に民法177条の解釈の誤りはない。
実務上の射程
本判決は、不法占拠者や不法行為者が民法177条の「第三者」に含まれないことを明示した。司法試験においては、物権変動の対抗関係において「正当な利益」を欠く背信的悪意者以外の類型(不法占拠者・無権利者等)を論じる際の基礎となる。損害賠償請求だけでなく、不法占拠者に対する物権的請求権の行使においても同様の論理が適用される。
事件番号: 昭和41(オ)358 / 裁判年月日: 昭和42年5月25日 / 結論: 棄却
不動産の売買の事実を知つたうえ、両当事者の了承をえて売主の受けるべき売買代金から自己の売主に対する債権の弁済を受けた者は、右買主に対し、登記の欠缺を主張する正当の利益をする第三者にあたらない。
事件番号: 昭和39(オ)1444 / 裁判年月日: 昭和40年5月25日 / 結論: 棄却
登記簿上主たる建物の附属建物として同一登記用紙に登記されているが、実体上は主たる建物とは別個独立である建物が、登記後に、滅失した場合には、当該登記中右のいわゆる附属建物に関する部分は無効となると解すべきである。
事件番号: 昭和47(オ)845 / 裁判年月日: 昭和48年4月12日 / 結論: 棄却
甲が乙所有の土地を買い受けて占有している事実を知つている乙の親族丙が、甲の所有権取得登記がされていないのに乗じ、甲の所有権取得の効果を対抗要件の欠缺により失わしめる目的で、乙との間の土地交換契約により右土地の所有権を取得しその旨の登記を経た等判示の事情がある場合には、丙はいわゆる背信的悪意者として、甲の土地所有権取得に…