正当事由に基づいて賃貸借の解約申入後建物明渡請求の訴訟が続行されているうち正当事由があることになつた場合は、正当事由のあることになつた時およびその後の六月の期間をもつて正当事由の有無の判断の基準時とすべきである。
解約申入による建物明渡請求の訴訟における正当事由の有無の判断の基準時
借家法1条ノ2,借家法3条1項
判旨
賃借権消滅のための正当事由は、解約申入時に存在しなくとも、その後の事情変更により具備され、かつその時から口頭弁論終結時までに6か月を経過すれば、賃貸借の終了が認められる。
問題の所在(論点)
解約申入当時に正当事由が欠けていた場合であっても、訴訟継続中に正当事由が具備されることによって賃貸借の終了が認められるか。また、その場合の終了時期はいつか。
規範
建物賃貸借の解約申入れに借地借家法28条(旧借家法1条の2)の正当事由が必要とされる場合において、解約申入当時に正当事由が欠けていたとしても、その後の事情変更により正当事由が具備されるに至り、かつ、その時から解約申入れの効力発生期間(6か月)が経過し、その間正当事由が継続しているときは、当該期間の経過をもって賃貸借は終了する。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、自己使用の必要から、昭和35年8月22日に賃借人(上告人)に対し解約申入れを行い、同年11月18日に建物明渡請求訴訟を提起した。解約申入当時には十分な正当事由がなかった可能性があるが、その後、被上告人の妻の姉がアパートに転居した昭和36年11月頃には、自己使用の必要性に基づく正当事由が具備されるに至った。賃借人は、過去に台風被害を受けた建物を自費で修理したことをもって正当事由を争ったが、裁判所は多額の費用支出を認めなかった。
あてはめ
被上告人の自己使用の必要性は、昭和36年11月頃の親族の転居という事情変更により、客観的に正当事由として認められる状態に至った。本件明渡請求訴訟は解約申入れに基づき継続しており、正当事由が具備された時点(昭和36年11月の終り)から起算して、借家法所定の解約期間である6か月を経過した時点においても、なおその事情に変更はない。したがって、正当事由の具備と期間の経過という法的要件をともに充足するに至ったといえる。
結論
本件賃貸借は、正当事由が具備された昭和36年11月末から6か月が経過した時点において終了したものと解すべきであり、明渡請求を認容した原判決は妥当である。
実務上の射程
正当事由の判断基準時は「解約申入時」を原則としつつも、口頭弁論終結時までの事情変更を考慮できるとする実務上の重要な指針。答案では、解約申入時に正当事由が疑わしい事案において、訴訟中の事情を拾って終了時期を調整する論理として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)54 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸借において、解約申入れ時に正当事由が存在し、一旦有効に解約の効力が発生した後は、その後に正当事由が消滅したとしても、解約の効力は失われない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃受人)との間の家屋賃貸借契約において、賃主から解約の申入れがなされた。解約申入れの時点では正当事由…