借家法第一条ノ二の正当事由による解約が一旦有効になされた以上、たとえ解約の効果発生後に事情が変動しても、すでになされた右解約が正当性を喪失して無効に帰すべきいわれはない。
解約の効果発生後の事情の変動とすでになされた解約の効力。
借家法1条ノ2,借家法3条
判旨
建物の賃貸借契約において解約の申入れがなされた場合、正当事由の存否は解約申入れの時点を基準として判断すべきであり、その後の事情は原則として正当事由の存否に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
賃貸借契約の解約申入れにおける「正当事由」の有無を判断する基準時期はいつか。また、解約申入れから法定期間(6か月)が経過し、契約が終了したとされる日より後の事情は正当事由の存否に影響を及ぼすか。
規範
借地借家法(旧借家法)に基づく賃貸借契約の解約申入れにおける正当事由の存否は、解約の意思表示がなされた時点における諸般の事情を総合考慮して判断する。したがって、解約申入れにより期間が経過し、契約終了の効力が発生すべき時点までの事情は考慮され得るが、効力発生後の事情は正当事由の存否に関する判断に直接の影響を及ぼさない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、建物が朽廃していない場合でも本訴において解約の意思表示をする旨を陳述した。原審は、この訴状送達等による解約申入れに正当事由があると認め、申入れから6か月を経過した昭和36年3月10日をもって賃貸借契約は終了したと判断した。これに対し、賃借人(上告人)は、当該基準日以降に生じた事情を考慮すべきであると主張して上告した。
あてはめ
被上告人による解約の申入れは、遅くとも昭和36年3月10日の6か月前になされており、その時点および経過期間における事情を基に正当事由が具備されていると認められる。一度正当事由を具備した解約申入れによって契約が終了した以上、その後の事情(昭和36年3月10日以降の事実)は、既に確定した契約終了の効力や正当事由の存否を左右するものではない。原審が「その後の事情は判断に影響しない」とした判断は正当である。
結論
解約申入れに基づく契約終了日以降の事情は、正当事由の存否の判断に影響しない。本件契約は昭和36年3月10日をもって終了している。
実務上の射程
正当事由の基準時に関するリーディングケースである。答案上は、正当事由の有無を検討する際に「解約申入れ時(および解約期間経過時)の事情を基準とする」根拠として引用する。ただし、現実の訴訟では口頭弁論終結時までの事情が事実上考慮される傾向にあるが、規範的には「契約終了時点」で正当事由が確定するという論理を示す際に有用である。
事件番号: 昭和28(オ)1360 / 裁判年月日: 昭和29年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法(旧借家法)における賃貸人からの解約申入れが認められるためには、正当事由の存在が必要である。本判決は、原審が認定した事実関係に基づき、昭和21年12月に行われた解約申入れに正当事由があると判断した原審の結論を維持した。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)は、昭和21年12月、上告人(賃…