借家法第一条の二の正当事由による解約が一旦有効になされた以上、たとえ解約の効果発生後に事情が変動しても、すでになされた右解約が正当性を喪失して無効に帰すべきいわれはない。
解約の効果発生後の事情の変動とすでになされた解約の効力
借家法1条ノ2,借家法3条
判旨
建物賃貸借の解約申入れに必要な「正当の事由」は解約申入れの有効要件であるから、その有無は解約申入れ時の事情に基づき判断すべきであり、その後に生じた事情の変化によって一旦有効になされた解約申入れが遡って無効になることはない。
問題の所在(論点)
建物賃貸借の解約申入れにおける「正当の事由」の有無を判断する基準時はいつか。解約申入れの効力発生後に生じた事情を考慮して、申入れの正当性を否定することができるか。
規範
建物賃貸借における解約申入れの「正当の事由」(借家法1条の2、現行借地借家法28条)は、解約申入れという法律行為の有効要件である。したがって、正当事由の有無は、解約申入れがなされた時点の事情を基準として判定すべきであり、一旦有効に申入れがなされた以上、その後の事情変動によって当該申入れの正当性が喪失し、無効に帰することはない。
重要事実
賃貸人(上告人)は、昭和23年3月30日に賃借人に対し建物解約の申入れを行った。原審は、解約申入れ当時の賃貸人の生活状態を考慮しただけでなく、解約申入れの効力発生後である昭和23年12月頃や、さらには第一審判決後である昭和25年1月頃以降に生じた後発的な事情を根拠に、本件解約申入れの正当性を否定した。
あてはめ
本件において、解約申入れは訴状送達日の昭和23年3月30日に行われたと認定されている。正当事由は解約申入れの有効要件であるから、同日時点の事情を基礎にその存否を決すべきである。しかし、原審は解約申入れから相当期間が経過した昭和23年末や昭和25年以降の事情を考慮して正当性を否定しており、これは解約申入れの有効性を基礎付けるべき判断基準時の誤解に基づくものといえる。一旦有効に成立した解約申入れが、後発的事情により無効化されることは法理上認められない。
結論
解約申入れの正当事由は申入れ時の事情により判断すべきであり、その後の事情変動により無効とはならない。後発的事情を考慮して正当性を否定した原判決には法令の解釈を誤った違法があるため、破棄を免れない。
実務上の射程
本判決は、正当事由の判断基準時を「解約申入れ時」に固定する原則を示したものである。ただし、実務上(特に現行法下)では、申入れ時から口頭弁論終結時までの事情も補充的に考慮される傾向にある。答案上は、本判決を維持しつつも、申入れ後の事情は「申入れ時の正当事由を補強・推認する資料」として、あるいは「立ち退き料の算定」において考慮される点に留意して論述を組み立てるのが一般的である。
事件番号: 昭和24(オ)345 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法下における賃貸借契約の解約申入れに「正当の事由」があるか否かは、解約申入れの効力発生当時における事情を基準に判断すべきであり、その後の事情を斟酌することはできない。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)は、被上告人(賃借人)に対し、昭和23年5月6日に期間の定めのない建物賃貸借契約の解約申…