山林の売買予約の成立を否定した二審の判断について審理不尽、理由不備を理由として差した場合において、差戻後の二審判決が、たまたま差戻前の判決の結論と一致していたとしても、その前提となる間接事実が異なる以上、民訴法第四〇七条第二項に違反しないというべきである。
一 民訴法第四〇七条第二項に違反しないとされた事例 二 松立木の売買予約の成立を否定した判断を違法といえないとした事例
民訴法407条2項,民訴法186条,民訴法394条
判旨
売買交渉における一方的な申入れが、直ちに契約の申込みや売買予約の成立を意味するものではなく、準備的交渉の範囲にとどまる場合は契約の成立を認められない。また、差戻判決の拘束力は、差戻前の事実認定を前提とする判断の違法性について及ぶものであり、差戻後の裁判所が異なる間接事実に基づき別個の事実判断をすることを妨げない。
問題の所在(論点)
1.売買交渉における「売却したい」旨の申入れが契約の申込み(または予約)にあたるか、準備的交渉にとどまるか。 2.差戻後の原審が、差戻判決の趣旨に反して再度同一の結論(予約不成立)を下すことが、差戻判決の拘束力に抵触するか。
規範
1.売買予約を含む契約の成立には、単なる交渉の申入れでは足りず、当事者間において法的な拘束力を有する合意が形成されることを要し、準備的交渉の段階にとどまる場合は契約の成立を否定すべきである。 2.民事訴訟法上の差戻判決の拘束力(民訴法407条2項)は、差戻前の判決が認定した事実関係を前提とした法的判断に及ぶものであり、差戻後の裁判所が証拠に基づき新たに異なる事実(間接事実)を認定し、それに基づき従前の結論とは異なる判断を行うことは、同条に違反しない。
重要事実
上告人(買主)は、被上告人(売主)の代理人から立木の売却希望の申入れを受け、買受資金の調達や石数調査等の準備を進めて交渉を重ねた。しかし、具体的な代金額について折り合いがつかず、被上告人側からは理事会の決定が必要である旨の留保がなされた。最終的に被上告人は売却しないことを決定し、上告人は売買予約の成立を主張して提訴した。差戻前の二審は予約成立を否定したが、上告審は事実認定に不備があるとして差し戻した。差戻後の原審は、異なる間接事実を認定した上で、再度予約の成立を否定したため、上告人が差戻判決の拘束力違反等を理由に上告した。
事件番号: 昭和34(オ)566 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 破棄差戻
一方において売買予約の成立を推定するに足る間接事実を認定しておきながら、他方首肯するに足る理由を示すことなく売買予約の成立を否定した原判決には、審理不尽理由不備則の違法がある。
あてはめ
1.被上告人側の申入れは、具体的な売買の合意を目指したものではあるが、代金額の不一致や内部決定手続の未了という事実がある以上、法的な「申込み」ではなく準備的交渉の範囲を出ない。上告人が多大な準備を尽くしたとしても、最終的に申入れが撤回された以上、契約は成立していない。 2.差戻判決は、旧判決の間接事実の認定から直ちに予約不成立と断じることの理由不備を指摘したに過ぎない。差戻後の原審が、新たに認定した事実(間接事実の変容)に基づき、再度売買予約を否定することは、差戻判決が示した法的判断を無視したことにはならず、適法である。
結論
売買予約の成立を否定した原審の判断は正当であり、差戻判決の拘束力に関する民事訴訟法の規定にも違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
契約締結上の過失に近い局面における「契約の成立認定」の厳格さを示す。特に、法人等の内部承認手続が必要な事案での交渉の法的評価に有用である。また、差戻判決の拘束力が及ぶ範囲が「事実認定の根拠となる法的評価」に限定され、新たな事実認定に基づく結論の維持を許容する点も民事訴訟法上の重要論点として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)277 / 裁判年月日: 昭和30年1月28日 / 結論: 棄却
裁判長たる裁判官が、当事者の一方の訴訟代理人の女婿であるからといつて、民訴第三七条第一項にいわゆる裁判の公正を妨ぐべき事情があるものとはいえない。
事件番号: 昭和24(オ)305 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
本件の様に、上告人の代金額を定めない申入れに対し被上告人から代金額を定めた返答があり、これに対して上告人が代金額を争い、両三回に亘り被上告人から被上告人の定めた代金額を受諾すべき旨の申入があつたに拘わらず、上告人がこれに応じなかつた如き場合においては代金額の不一致により契約が成立しなかつたものと見るのが通常である。
事件番号: 昭和44(オ)669 / 裁判年月日: 昭和48年3月29日 / 結論: 棄却
木場の木材取引業者である甲が、自己の占用水面において筏屋を占有補助者として占有中の木材を乙に売り渡し、その木材を乙の占用水画への回漕を筏屋に依頼する一手段として、甲が筏屋に宛てて右木材を乙に引き渡されたい旨記載した荷渡指図書を発行して乙に交付した場合においても、木場の木材取引業者間において、かかる荷渡指図書の交付なり呈…