木場の木材取引業者である甲が、自己の占用水面において筏屋を占有補助者として占有中の木材を乙に売り渡し、その木材を乙の占用水画への回漕を筏屋に依頼する一手段として、甲が筏屋に宛てて右木材を乙に引き渡されたい旨記載した荷渡指図書を発行して乙に交付した場合においても、木場の木材取引業者間において、かかる荷渡指図書の交付なり呈示なりによつて直ちに木材の引渡が完成するとの慣習が確立されていない以上、右荷渡指図書の交付をもつて木材の引渡があつたものと解することはできない。
木場の木材取引業者間に授受された荷渡指図書にいわゆる物権的効力は認められないとされた事例
商法1条,商法575条
判旨
木材取引における荷渡指図書の交付または提示は、直ちに占有移転の効力を生じさせるものではなく、これによって指図による占有移転(民法184条)が成立したとは認められない。
問題の所在(論点)
木材取引で交付される「荷渡指図書」の提示が、指図による占有移転(民法184条)としての効力を有し、即座に占有が移転したといえるか。
規範
指図による占有移転(民法184条)が認められるためには、本人(譲渡人)が代理人に対して以後第三者(譲受人)のために占有すべきことを命じ、かつ、当該第三者がこれを承諾する必要がある。取引上の便宜のために発行される書面が物権的効力を有するか否かは、当該取引における慣習や書面の性質に照らして判断されるべきであり、発行人がいつでも引渡しを取消・撤回できる性質の書面であれば、その呈示のみで占有移転の効力を認めることはできない。
重要事実
被上告人(売主)がD(中間買主)に木材を売り、Dがさらに上告人(転買主)に転売した。被上告人は占有補助者である筏屋Eに宛てた荷渡指図書をDに交付し、Dも同様の指図書を作成して上告人に交付した。上告人はEに指図書を呈示したが、Eが現実の回漕(引渡し)に着手する前に、被上告人とDの契約が合意解約された。木場での慣習上、筏屋は売主の確認を得てから回漕に着手し、それまでは売主からの回漕中止指示に従うのが通例であった。
事件番号: 昭和33(オ)949 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権確認及び物件引渡請求の訴えにおいて、係争地が自己の所有地に属するか否かの判断は、境界確定の訴えを要することなく、証拠に基づく裁判所の事実認定によって決することができる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件松丸太材が自己の所有であることの確認と引渡しを求め、上告人(被告)に対し提訴した…
あてはめ
本件の荷渡指図書は、取引の簡便・確実を期する手段にすぎず、筏屋による現実の回漕が行われるまでは売主がいつでも取消・撤回できる性質のものであった。また、木材取引の慣行として、指図書の提示により直ちに引渡しが完了するという認識は確立されていない。したがって、上告人がEに指図書を提示したとしても、Eが被上告人の承諾なく回漕する意思がなかった以上、Eが以後上告人のために占有する意思を有した(代理権の承諾)とはいえず、占有移転は完了していない。ゆえに、被上告人は合意解約による所有権復帰を上告人に対抗できる。
結論
荷渡指図書の提示に指図による占有移転の効力は認められず、上告人は所有権を有効に取得していないため、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
特定の商取引における慣習が「占有移転」の要件を満たすかを判断した事例。荷渡指図書が貨物引換証等の有価証券(物権的効力)を有しない限り、その授受のみで民法184条の要件を当然に充足するわけではないことを示しており、特に占有補助者の意思や売主の撤回権が留保されている状況では、対抗要件としての占有移転が否定されやすい。
事件番号: 昭和43(オ)369 / 裁判年月日: 昭和44年5月29日 / 結論: 棄却
仮処分の目的物の引渡請求訴訟係属中に、目的物が執行裁判所によつて換価され、売得金が供託された場合において、その請求を認容する判決の主文は、目的物の引渡を命ずるものであつても、売得金の引渡を命ずるものであつてもよい。
事件番号: 昭和24(オ)305 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
本件の様に、上告人の代金額を定めない申入れに対し被上告人から代金額を定めた返答があり、これに対して上告人が代金額を争い、両三回に亘り被上告人から被上告人の定めた代金額を受諾すべき旨の申入があつたに拘わらず、上告人がこれに応じなかつた如き場合においては代金額の不一致により契約が成立しなかつたものと見るのが通常である。
事件番号: 昭和40(オ)1060 / 裁判年月日: 昭和42年6月22日 / 結論: 棄却
山林の売買予約の成立を否定した二審の判断について審理不尽、理由不備を理由として差した場合において、差戻後の二審判決が、たまたま差戻前の判決の結論と一致していたとしても、その前提となる間接事実が異なる以上、民訴法第四〇七条第二項に違反しないというべきである。