仮処分の目的物の引渡請求訴訟係属中に、目的物が執行裁判所によつて換価され、売得金が供託された場合において、その請求を認容する判決の主文は、目的物の引渡を命ずるものであつても、売得金の引渡を命ずるものであつてもよい。
仮処分の目的物の引渡請求訴訟係属中目的物が換価されその売得金が供託された場合と請求認容判決の主文
民訴法191条,民訴法750条,民訴法756条
判旨
仮処分の目的物が換価された場合の売得金は目的物の代位物として同一性を保持するため、本案訴訟において当該売得金の引渡を求めることができる。また、所有権に基づく伐採木の引渡請求権が不可分である以上、その代位物である売得金の引渡請求権も不可分債権となる。
問題の所在(論点)
1. 仮処分目的物の換価後において、売得金の引渡を請求することの可否。2. 目的物の引渡請求権が不可分である場合、その代位物たる売得金の引渡請求権の性質(可分か不可分か)。
規範
仮処分の目的物が執行裁判所の換価命令によって換価・供託された場合、その売得金は目的物に代わるものとして同一性を保持する。したがって、本案訴訟の目的物たる権利関係は消滅せず、裁判所は換価前の目的物または換価後の売得金のいずれの引渡をも命じることができる。また、本来の目的物引渡請求権が不可分であるときは、その代位物たる売得金の引渡請求権も不可分なものとして扱われる。
重要事実
被上告人(原告)らは共有する山林から上告人(被告)らによって無断伐採された松(伐採木)につき、搬出禁止等の仮処分を得て執行官に占有保管させた。その後、伐採木が腐食したため換価命令により売却され、代金が供託された。被上告人らは当初、伐採木の引渡を求めていたが、換価に伴い売得金の引渡を求める請求に改めた。上告人側は、売得金の引渡を命じることは履行不能を強いるものであり、また金銭債権である以上は可分債権であると主張して争った。
事件番号: 昭和33(オ)949 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権確認及び物件引渡請求の訴えにおいて、係争地が自己の所有地に属するか否かの判断は、境界確定の訴えを要することなく、証拠に基づく裁判所の事実認定によって決することができる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件松丸太材が自己の所有であることの確認と引渡しを求め、上告人(被告)に対し提訴した…
あてはめ
仮処分目的物が換価されても、その売得金は目的物の形を変えたものにすぎず、物権的請求権の対象としての同一性を失わない。本件では伐採木が売得金へと転化した後も、被上告人らは本来の所有権に基づき、目的物の代位物である売得金の引渡を請求できるため、これを認容した原判決に履行不能の違法はない。また、共有者全員に帰属する所有権に基づく伐採木の引渡請求権は、その性質上不可分である。売得金がこの目的物の同一性を承継する以上、その引渡請求権も同様に不可分債権(民法428条参照)として扱われるのが相当である。
結論
本案裁判所は売得金の引渡を命じることができ、その請求権は不可分なものとして、共有者である被上告人らの請求を全面的に認容すべきである。
実務上の射程
民事執行・保全手続において目的物が換価された際の「物上代位」的な同一性保持を認めた点に意義がある。答案上は、物の引渡請求訴訟の係属中に目的物が換価された場合の請求変更(訴えの交換的変更等)の正当化や、共有に基づく物権的請求権が代位物に対しても不可分性を維持することを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和44(オ)669 / 裁判年月日: 昭和48年3月29日 / 結論: 棄却
木場の木材取引業者である甲が、自己の占用水面において筏屋を占有補助者として占有中の木材を乙に売り渡し、その木材を乙の占用水画への回漕を筏屋に依頼する一手段として、甲が筏屋に宛てて右木材を乙に引き渡されたい旨記載した荷渡指図書を発行して乙に交付した場合においても、木場の木材取引業者間において、かかる荷渡指図書の交付なり呈…
事件番号: 昭和39(オ)586 / 裁判年月日: 昭和43年1月25日 / 結論: 棄却
所有権に基づいて伐採木の搬出禁止を求める本案訴訟の係属中に、仮処分に付されていたその目的物件が執行裁判所によつて換価され、売得金が供託された場合においても、本案裁判所は、目的物件が換価されなかつた場合とひとしく、本来の訴訟物たる権利ないし法律関係について審理し、判決することを妨げない。