所有権に基づいて伐採木の搬出禁止を求める本案訴訟の係属中に、仮処分に付されていたその目的物件が執行裁判所によつて換価され、売得金が供託された場合においても、本案裁判所は、目的物件が換価されなかつた場合とひとしく、本来の訴訟物たる権利ないし法律関係について審理し、判決することを妨げない。
仮処分の目的物件が換価されその売得金が供託された場合と本案訴訟のきすう
民訴法226条,民訴法750条,民訴法756条
判旨
不特定物の贈与において目的物が特定されない限り、目的物の所有権は贈与者に留保される。また、仮処分目的物が換価・供託された場合でも、その売得金は目的物と同一性を保持するため、本来の目的物に対する権利関係を審理する本案判決を妨げない。
問題の所在(論点)
1. 贈与契約において目的物が具体的に特定されていない場合、その所有権は誰に帰属するか。 2. 仮処分目的物が換価・供託された場合、本来の目的物に対する禁止請求の訴えの利益や目的は失われるか。
規範
1. 不特定物の譲渡において、目的物を特定する方法について合意がなく、かつ具体的に特定された事実がない場合には、目的物の所有権は譲受人に移転せず譲渡人に属する。 2. 仮処分執行中に目的物が換価・供託された場合、その売得金は目的物の経済的価値を保全するものであり、目的物との同一性を保持する。したがって、本案訴訟の目的物たる権利関係は消滅せず、裁判所は本来の目的物を対象として審理・判決を行うことができる。
重要事実
贈与者Bは、受贈者Aらに対し、自己の所有する山林内の杉立木のうち「細木3,000本」を贈与する契約を締結した。しかし、どの立木を贈与するかを特定する方法については合意がなかった。Aらは目的物が特定されないまま山林に立ち入り、全伐を目的として2,473本の立木を伐採した。Bは伐採・搬出の禁止を求めて仮処分を申請し、執行中に伐採木は換価・供託された。BはAらに対し、山林への立入禁止、立木の伐採禁止、および伐採木の搬出禁止を求めて本案訴訟を提起した。
あてはめ
1. 本件贈与契約は「細木3,000本」を目的とするが、その特定の合意も具体的な特定事実もない。よって、山林内の立木および伐採木は依然としてBの所有に属するといえる。Aらが将来的に伐採等を続行するおそれがある以上、Bの所有権に基づく妨害予防請求は認められる。 2. 伐採木の換価は経済的価値の保全を目的とするものであり、売得金は伐採木と同一性を有すると解される。したがって、換価により目的物が滅失したとはいえず、搬出禁止等の本案請求は、換価が行われなかった場合と同様に審理・判決することが可能であり、訴えの利益も失われない。
結論
1. 目的物が特定されていない以上、所有権は依然として贈与者Bにあり、Bの請求は認められる。 2. 目的物が換価・供託されても、訴訟の目的は消滅せず、本来の目的物を対象とした判決を維持できる。
実務上の射程
選択債務や不特定物債権における所有権移転時期の判断基準として活用できる。また、民事保全法上の換価(現行法16条参照)がなされた場合でも、本案訴訟の目的が直ちに消滅しないことを示す手続法上の重要判例である。
事件番号: 昭和43(オ)369 / 裁判年月日: 昭和44年5月29日 / 結論: 棄却
仮処分の目的物の引渡請求訴訟係属中に、目的物が執行裁判所によつて換価され、売得金が供託された場合において、その請求を認容する判決の主文は、目的物の引渡を命ずるものであつても、売得金の引渡を命ずるものであつてもよい。
事件番号: 昭和24(オ)305 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
本件の様に、上告人の代金額を定めない申入れに対し被上告人から代金額を定めた返答があり、これに対して上告人が代金額を争い、両三回に亘り被上告人から被上告人の定めた代金額を受諾すべき旨の申入があつたに拘わらず、上告人がこれに応じなかつた如き場合においては代金額の不一致により契約が成立しなかつたものと見るのが通常である。
事件番号: 昭和37(オ)537 / 裁判年月日: 昭和40年12月21日 / 結論: 棄却
債権者が譲渡担保ならびに代物弁済契約に基づいて債務者から立木の所有権を取得したことを理由に右立木につき伐採搬出を許す旨の仮処分命令を得て、これを伐採搬出したが、右契約が臨時物資需給調整法に基づく木炭需給調整規則(昭和二四年農林省令第七四号)に違反する木炭出荷義務を担保するためになされたために無効であり、したがつて、債権…