判旨
所有権確認及び物件引渡請求の訴えにおいて、係争地が自己の所有地に属するか否かの判断は、境界確定の訴えを要することなく、証拠に基づく裁判所の事実認定によって決することができる。
問題の所在(論点)
所有権確認および引渡請求訴訟において、物の所在範囲(土地の境界に関連する事実)の認定を、境界確定の訴えを経ることなく通常の事実認定として行うことができるか。また、公的台帳図面と異なる事実認定を行うことの是非。
規範
特定の給付や所有権の確認を求める訴訟において、目的物の所在や範囲が争点となる場合、裁判所は提示された証拠(現場の状況、証言等)に基づき、自由な心証によってその範囲を認定できる。公的な台帳図面と現況が一致しない場合であっても、他の証拠に基づき現況を優先して認定することは、特段の事情がない限り裁判所の専権に属する。
重要事実
被上告人(原告)は、本件松丸太材が自己の所有であることの確認と引渡しを求め、上告人(被告)に対し提訴した。争点は、当該丸太の伐採地域が被上告人所有の「d番山林」か、上告人主張の「a番山林」のいずれに属するかであった。原審は証拠に基づき被上告人所有地であると認定したが、上告人は役場の台帳図面(公的資料)と認定が矛盾することを理由に、採証の法則違背を主張して上告した。
あてはめ
本件訴訟の目的は松丸太材の所有権確認と引渡しであり、土地境界の確定そのものを目的とするものではない。したがって、裁判所が証拠により伐採地域を特定することは可能である。また、役場の台帳図面(甲第一号証の二)について、原審はこれが現場の現況と必ずしも一致しないことを証拠上認め、当該図面を排斥している。これは適法な証拠の取捨選択であり、事実認定に合理性が認められる。
結論
本件係争地域が被上告人所有の山林に属するとした原審の判断は正当であり、上告は棄却される。
事件番号: 昭和44(オ)669 / 裁判年月日: 昭和48年3月29日 / 結論: 棄却
木場の木材取引業者である甲が、自己の占用水面において筏屋を占有補助者として占有中の木材を乙に売り渡し、その木材を乙の占用水画への回漕を筏屋に依頼する一手段として、甲が筏屋に宛てて右木材を乙に引き渡されたい旨記載した荷渡指図書を発行して乙に交付した場合においても、木場の木材取引業者間において、かかる荷渡指図書の交付なり呈…
実務上の射程
境界争いが背景にある所有権確認等の訴訟(いわゆる境界紛争訴訟)において、公的な地図や台帳は有力な証拠となるが、絶対的な拘束力を持つものではない。現場の現況や他の証拠に基づき、裁判所が自由な心証で「所有権の及ぶ範囲」を認定できることを示す実務上重要な指針である。
事件番号: 昭和31(オ)347 / 裁判年月日: 昭和32年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の対象が不特定物ではなく特定物であるか否かは、証拠に基づき確定された事実関係を前提として判断されるべき事項である。 第1 事案の概要:上告人は本件売買が特定物の売買ではないと主張したが、原審は証拠に基づき、当該契約を特定物の売買であると認定した。上告人はこの事実認定を不服として上告した事案…
事件番号: 昭和35(オ)86 / 裁判年月日: 昭和37年3月2日 / 結論: 棄却
山林の入口、山林内路傍、山林頂上の三ケ所の立木に、幅約二〇糎、長さ約四五糎、厚さ約二糎の板に、「a山林六町七反八畝歩は名義人において買受けたから伐採を禁ずる」旨記載した立札を釘で打付けたこと、右山林は俗にbと呼ばれていることの事実があるときは、右立札による公示は、右山林内の立木所有権の明認方法として有効である。
事件番号: 昭和43(オ)369 / 裁判年月日: 昭和44年5月29日 / 結論: 棄却
仮処分の目的物の引渡請求訴訟係属中に、目的物が執行裁判所によつて換価され、売得金が供託された場合において、その請求を認容する判決の主文は、目的物の引渡を命ずるものであつても、売得金の引渡を命ずるものであつてもよい。