代表権限のない者の提起した不適法な訴と判断した原判決が、右判断の基礎とされた行政処分が原審の口頭弁論終結後に変更されたために破棄された事例
判旨
行政処分が後日取り消された場合、その効力は遡及的に失われるため、当該処分が有効であることを前提になされた代表権の否定等の判断は失当となり、当初の法主体性が維持される。
問題の所在(論点)
行政処分(規則認証)の取消しが、当該処分を前提として判断された訴訟上の代表権(民事訴訟法37条・旧民訴法45条等)の有無にどのような影響を及ぼすか。
規範
行政処分(宗教法人規則の認証等)が違法として取り消された場合、当該処分は当初から無効であったことになり、その処分が有効であることを前提として生じた法的効果(被包括関係の廃止や新法人の設立登記等)も遡及的にその効力を失う。
重要事実
宗教法人令による旧法人A寺の主管者Bは、宗教法人法への移行に際し、新法人E寺の規則認証を受け設立登記を了した。これに伴いBは包括団体D宗との被包括関係を廃止したが、後にD宗から新主管者に任命されたFが本訴を提起した。第一審・原審は、新法人設立によりFを主管者に任命する行為は効力を失うとして訴えを却下。しかし、その後、文部大臣の裁決及び県知事の認証処分が違法として裁判で取り消され、設立登記も抹消された。
あてはめ
本件では、E寺の規則認証処分が行政訴訟の判決を経て県知事により取り消されたため、新法人の設立は遡及的に無効となった。したがって、旧法人A寺は宗教法人令上の清算法人として存続しており、新法人設立を前提とした被包括関係の廃止も効力を認められない。そうすると、包括団体D宗の規程に基づき任命されたFは、旧法人の主管者(または清算人)として正当な代表権を有していたといえる。認証処分の有効性を前提にFの代表権を否定した原審の判断は、処分の取消しという事後的な事実により、その根拠を欠くに至った。
結論
行政処分の取消しにより、新法人への移行を前提とした代表権の否定は維持できず、Fの代表権は認められるため、本訴却下判決は破棄される。
実務上の射程
行政処分の公定力と遡及的取消しの法理を実務に適用した事例である。特に、法人の設立登記の基礎となる認証処分が取り消された場合、登記外観にかかわらず実体的な代表権の有無は当初の法主体性に依拠して判断されるべきであることを示しており、訴訟要件としての代表権の確定において重要である。
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。
事件番号: 昭和33(オ)576 / 裁判年月日: 昭和35年8月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の違法を理由として私法上の権利関係の確認や登記抹消を求める訴訟は、行政処分の取消変更を直接求めるものではないため、行政事件訴訟の特例は適用されない。 第1 事案の概要:被上告人が、農地の所有権に基づき、上告人名義の所有権取得登記の抹消登記手続を求めて提訴した。この際、被上告人は請求を基礎付…
事件番号: 昭和36(オ)35 / 裁判年月日: 昭和39年1月21日 / 結論: 棄却
旧民法第九三〇条第一項の取消の相手方は最初の法律行為の相手方及びその包括承継人であると解するのを相当とするから、包括承継人に対する取消の意思表示は有効である。