一 上告人が昭和二四年九月被上告人に対し、上告人製造にかかる低乾中油を加工精製したD油を毎月一〇〇屯供給する旨を約した契約につき、上告人が同年一一月から翌二五年五月までの間に合計一一五屯余のD油を供給したところ、昭和二五年二月頃右契約当事者が話し合つた際にも、上告人が履行の言訳けに終始したところ、当時上告人はなお右D油を製造しており、またその意慾を示していたこと等判示の事情のもとにおいては、右契約に基づく上告人の履行が原始的に不能であつたとは認められない。 二 継続的供給契約において、一方当事者が相手方の前期の給付に関する不履行にもかかわらず、自己の後期の債務の一部の履行を続けたからといつて、直ちに同時履行の抗弁権を放棄したものということはできない。
一 油等の継続的供給契約において履行の原始的不能が認められないとされた事例 二 継続的供給契約において同時履行の抗弁権の放棄が認められないとした事例
民法第2章第1節第1款,民法533条
判旨
継続的供給契約において、当事者は相手方の前期の給付不履行を理由に、後期の自己の給付につき同時履行の抗弁権を有し、特段の事情がない限り、反対給付の提供のない催告によって履行遅滞に陥ることはない。
問題の所在(論点)
継続的供給契約において、先行する給付に対する代金が未払である場合、それ以降の供給義務について同時履行の抗弁権が認められるか。また、抗弁権を行使せずに履行を継続していた場合、反対給付の提供を欠いた催告によって履行遅滞に陥るか。
規範
継続的供給契約における各当事者は、相手方の前期の給付に対する債務の不履行を理由として、後期の自己の給付につき同時履行の抗弁権(民法533条参照)を有する。同時履行の関係にある場合、反対給付の提供をしないでした履行の催告は、相手方を遅滞に陥らしめることはできず、これに基づく解除の意思表示も効力を生じない。また、単に抗弁権を行使せずに履行を継続した事実のみをもって抗弁権を放棄したものと解することはできず、放棄と認められるには特段の事情を要する。
重要事実
上告会社と被上告会社は、毎月一定量のD油を供給する継続的供給契約を締結した。上告会社は一部の供給を行ったが、被上告会社は代金の一部(30万円)のみを支払い、未払金が存在していた。上告会社は、代金の支払いを受けないまま供給を継続し、特に出荷拒否の意思表示もしていなかった。その後、被上告会社は、上告会社に対し一定期間内の完全な履行を催告し、不履行を条件とする解除通知を送付したが、この催告に際して自己の未払代金の提供は行っていなかった。
あてはめ
本件契約は継続的供給契約であり、上告会社は被上告会社の前期代金不払を理由に、後期の給付について同時履行の抗弁権を有する。上告会社が代金未払のまま供給を継続し、催告時に抗弁権を行使した事跡が認められないとしても、それだけで直ちに抗弁権を放棄したとはみなせない(特段の事情がない)。したがって、被上告会社が自己の対価債務(未払代金)の提供をせずに行った履行催告は、上告会社を遅滞に陥らせる効力を持たず、当該催告に基づく解除は認められない。
結論
反対給付の提供を欠いた被上告会社の催告は、上告会社を履行遅滞に陥らせることはできず、本件契約の解除は無効である。
実務上の射程
継続的契約において、一部の不履行がある中で漫然と取引を継続していたとしても、当然には同時履行の抗弁権を放棄したことにはならない点に注意を要する。解除を有効とするためには、過去の未払分を含めた反対給付の提供、あるいは抗弁権を消滅させる「特段の事情」の立証が必要となる。
事件番号: 昭和38(オ)842 / 裁判年月日: 昭和43年6月27日 / 結論: 棄却
一、登記官吏の過失により虚偽の所有権移転登記がされ、これを信頼して土地を買い受け、その地上に建物を建築したものが、右事実関係を知り自己が右土地の所有権を取得しえないことを知つたときは、その時に、右建物を収去することによつて生ずる損害についてもその損害および加害者を知つたものと解するのが相当である。 二、不法行為に基づく…