賃借人が賃貸人の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使する案件において、不法占拠者とされる者の主張する占有権原の存否について審理不尽理由不備があるとされた事例。
判旨
賃借人が賃貸人の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使する場合において、占有者が正当な占有権原を主張・立証しているときは、裁判所は当該主張について十分な審理・判断を尽くすべきであり、これを怠った判決には理由不備の違法がある。
問題の所在(論点)
賃借人が債権者代位権に基づき建物の明渡しを請求する際、占有者が主張する特定の占有権原(賃貸借承継)について裁判所が判断を回避した場合の適法性。
規範
不動産賃借人が賃貸人の妨害排除請求権を代位行使(民法423条1項)して明渡しを求める場合、相手方(占有者)が賃貸人等との間に適法な占有権原(賃貸借契約の承継等)を有する旨の主張・立証を行ったときは、裁判所はその存否につき認定判断を尽くさなければならない。相手方の主張に対し、時期を限定した抽象的な否定に留まり、提出された証拠に基づく具体的な抗弁への判断を欠くことは、審理不尽・理由不備として認められない。
重要事実
被上告人(賃借人)が、賃貸人である上告人A2に代位して、不法占拠者とされる上告人A1に対し家屋明渡しを求めた。これに対しA1は、自身の亡夫Dが前所有者Eから本件家屋を賃借し、その賃貸借関係がA1とA2の間で承継されていると主張。その立証として、家賃通帳や家賃領収書を提出した。しかし、原審は「被上告人が借家した昭和25年頃にDが借家した事実は認められない」と判示したのみで、A1が主張した昭和28年以降の賃貸借関係の成否については何ら判断を示さなかった。
あてはめ
本件において、A1は家賃通帳等の具体的な証拠を提出し、昭和28年以降の占有権原を具体的に主張している。これに対し原審は、被上告人が借家を開始した昭和25年頃という一点のみを捉えてA1側の賃貸借を否定したが、これはA1が主張する時期や態様と齟齬がある。提出された証拠に基づく具体的な占有権原の存否について判断を全く示さないまま、不法占拠と断定して明渡しを認容した原審の判示は、審理不尽であり、かつ判決に影響を及ぼす理由不備があるといえる。
事件番号: 昭和26(オ)610 / 裁判年月日: 昭和27年5月9日 / 結論: 棄却
他人の賃借現住中の家屋を買い受けた者でも、原判決認定のような事情があるときは、右家屋中原判示部分の明渡を求めるにつき正当の事由がある。
結論
上告人A1に関する原判決を破棄し、差し戻す。A1が主張する占有権原の存否について、具体的な証拠に基づき再審理すべきである。
実務上の射程
債権者代位権(民法423条)を用いた明渡請求に対する占有者の抗弁の処理を扱った事例。答案上は、代位行使の要件(無資力要件の要否等)の検討に加え、相手方からの「対抗しうる占有権原」の主張があった場合に、裁判所が判断すべき対象を特定する際の素材として用いる。
事件番号: 昭和27(オ)220 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解約申入れにおける正当事由の存否は、当事者双方の諸事情を比較考量して判断されるべきである。 第1 事案の概要:本件は、建物の賃貸人が賃借人に対し、借家法(当時)に基づき解約の申入れを行った事案である。原審(控訴審)は、当事者双方の事情を認定・比較した上で、本件解約申入れには正当な事由が…