判旨
期間の定めのない土地賃貸借において、借地法附則17条1項により契約が終了する場合であっても、借地人が土地の使用を継続する際に賃貸人が遅滞なく異議を述べないときは、民法619条1項の類推適用により契約が更新される。
問題の所在(論点)
期間の定めのない土地賃貸借が旧借地法附則17条1項により終了する場合において、賃貸人が土地の使用継続に対し「遅滞なく異議」を述べなかったとき、賃貸借契約の更新が認められるか。
規範
土地賃貸借契約において、期間満了後も借地人が土地の使用を継続し、賃貸人がこれを知りながら「遅滞なく異議」を述べないときは、従前の契約と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなされる(民法619条1項参照)。この理は、旧借地法附則17条1項の適用により存続期間が満了する場合においても同様に妥当し、法定更新を阻止するためには、賃貸人による適法かつ時期に遅れない異議の申出が必要である。
重要事実
上告人の前主であるDと被上告人との間で、期間の定めのない土地賃貸借契約が締結されていた。借地法附則17条1項の規定によれば、本件賃貸借の終期は昭和30年8月頃となるものであったが、当該期間が満了した後も被上告人は本件土地の使用を継続した。これに対し、Dは昭和29年中に更新拒絶の申入れをしたと主張したが、原審はその事実を認めず、むしろ期間満了後の使用継続に対して遅滞なく異議を述べた事実はないと認定した。上告人は、期間満了による終了を主張して上告した。
あてはめ
本件において、賃貸借契約には期間の定めがなく、法附則に基づき昭和30年8月が終期と解される。被上告人はこの終期経過後も土地の使用を継続していたが、賃貸人Dはこれに対して遅滞なく異議を申し立てていない。上告人が主張する昭和29年中の更新拒絶の事実は認められず、期間満了後の使用継続という客観的事態に対する反対の意思表示が欠けている。したがって、異議の申入れがない以上、賃貸借契約は更新されたものとみなされる。
結論
本件賃貸借契約は、期間満了後の使用継続に対する異議が遅滞なくなされていないため、終了したものとは認められず、更新されたものと解すべきである。上告棄却。
事件番号: 昭和37(オ)1277 / 裁判年月日: 昭和39年3月13日 / 結論: 棄却
甲所有の土地の一部を乙が賃借して家屋を建築して居住し、甲の居住家屋と相隣関係をなすとき、甲が甲使用の宅地部分に物置を設置して乙が賃借地の境界に植えた生垣の一部を枯死させたとしても、原判示(第一審判決引用)事実関係(第一審判決理由参照)のもとにおいては、乙の賃料不払を理由とする甲の右賃貸借契約解除は権利濫用にあたらない。
実務上の射程
借地借家法下の実務においても、期間満了後の使用継続による黙示の更新を阻止するためには、単なる事前の更新拒絶だけでなく、期間満了後の「遅滞なき異議」が重要であることを示す。旧法下の事案ではあるが、更新拒絶の効力を基礎づける事実認定のあり方や、民法619条の類推適用の枠組みを理解する上で重要である。
事件番号: 昭和38(オ)235 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
準備書面及び書証の表示文言に判示のような記載があっただけでは、当該要証事実の主張があったとは見られない。
事件番号: 昭和47(オ)1191 / 裁判年月日: 昭和48年4月13日 / 結論: 棄却
土地に対する使用貸借上の借主の権利の時効取得が成立するためには、土地の継続的な使用収益という外形的事実が存在し、かつ、その使用収益が土地の借主としての権利の行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを必要とする。
事件番号: 昭和38(オ)627 / 裁判年月日: 昭和39年11月17日 / 結論: 棄却
ただ、相上告人の上告理由中利益なものを援用すると主張する上告理由の記載は、具体性を欠き法定の方式をそなえるものとは認められない。
事件番号: 昭和35(オ)630 / 裁判年月日: 昭和37年5月25日 / 結論: 棄却
催告の過大が特に著しい程度でなく、支払義務のある限度の弁済の提供に対する債権者の受領拒絶も考えられない事情のもとでは、過大催告は必しも無効でない。