建築材料の製造販売を営む者に対し、右材料置場として使用する目的で土地を賃貸した場合においては、賃借人によつてその土地上に事務所、倉庫等の建設がなされたとしても、当該土地賃貸借を借地法第一条にいわゆる建物の所有を目的とするものとすることはできない。
建築材料置場として使用するための土地の賃貸借と借地法の適用。
借地法1条
判旨
土地の賃貸借において、借地上に事務所や倉庫等の建物が建設された場合であっても、それが土地の本来の使用目的のために従として使用されているに過ぎないときは、借地法1条(現行借地借家法2条1号)にいう「建物の所有を目的とする」ものとはいえない。
問題の所在(論点)
資材置場として土地を利用する中で、その利便のために事務所や仮設倉庫を建築した場合、当該土地賃貸借は借地法1条(現行借地借家法2条1号)の「建物の所有を目的とする」ものに該当するか。
規範
土地賃貸借が借地法1条(現行借地借家法2条1号)の「建物の所有を目的とする」ものに該当するか否かは、賃貸借の主たる目的によって決すべきである。土地上に建物が存在する場合であっても、その建物が賃借人の事業における資材置場等の土地使用目的を達するための「従たる」施設に過ぎない場合には、建物所有を目的とする賃貸借には当たらない。
重要事実
賃借人Dは、セメント瓦等の製造販売を目的として、賃理人から本件土地を含む一団の土地を「資材蔵置」の目的で賃借した。Dは当該土地上に建築材料蔵置のための仮設建物3棟を建築し、他の一部に事務所用建物を建築したが、土地の大部分はセメント瓦や砂利等の建築材料置場として使用されていた。その後、当事者間の合意により一部土地の契約が解除され、本件土地のみの賃貸借が継続していたところ、賃貸人が解約を申し入れたため、本件賃貸借が借地法の適用を受ける建物所有目的のものかが争点となった。
事件番号: 昭和37(オ)995 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
一 一時使用のための土地賃借人が七〇才をこえる老人であるからといつて、これに対し右賃貸借を解除して建物収去土地明渡を求めることは、原審確定の事実関係のもとで権利濫用とはいえない。 二 借地契約にあたつて賃借人が第三者の無断建築物を買い取り右居住者を立ち退かせる約定があり、賃借人において、これを買い取つたといういきさつが…
あてはめ
本件において、賃借人が建築した事務所や倉庫等の建物は、セメント瓦等の製造販売および材料蔵置という本来の土地使用目的を遂行するために「従として」使用されているに過ぎない。土地利用の実態はあくまで建築材料の置場であり、建物の所有そのものが賃貸借の主たる目的化しているとは認められない。したがって、本件土地賃貸借は建物所有を目的とするものとはいえず、また、一時使用の目的のために約定されたものと解される。
結論
本件土地賃貸借は「建物の所有を目的とする」ものとはいえず、借地法の適用はない。したがって、賃貸人による解約申入れおよび土地明け渡し請求は認められる。
実務上の射程
借地借家法の適用範囲を画する重要な判例である。建物が存在するからといって直ちに同法が適用されるわけではなく、契約の主たる目的が建物所有にあるのか、あるいは資材置場や駐車場等の平地利用の附随的なものに過ぎないのかを、土地利用の実態から判断する際の枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和49(オ)370 / 裁判年月日: 昭和49年10月25日 / 結論: 棄却
バツテイング練習場として使用する目的で賃貸借がされた場合には、たとえ当初からその土地上にバツテイング練習場の経営に必要な事務所用等の建物を築造、所有することが予定されていたとしても、特段の事情のないかぎり、その土地の賃貸借は、借地法一条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」賃貸借ということができない。
事件番号: 昭和50(オ)115 / 裁判年月日: 昭和50年10月2日 / 結論: 棄却
一、バツテイング練習場として使用する目的の土地の賃貸借契約は、右土地上にバツテイング練習場の経営に必要な管理人事務所用の小規模の仮設建物を建築所有することが許されていたとしても、借地法一条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」賃貸借にあたらない。 二、バツテイング練習場として使用する目的で土地の賃貸借がされた場合に、右練習場…
事件番号: 昭和42(オ)293 / 裁判年月日: 昭和42年12月5日 / 結論: 破棄差戻
ゴルフ練習場として使用する目的でされた土地の賃貸借がされた場合には、たとえ当初からその土地上にゴルフ練習場の経営に必要な事務所用等の建物を築造、所有することが予想されていたとしても、特段の事情のないかぎり、その土地の賃貸借は、借地法第一条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」賃貸借ということはできない。