民法第一二六条にいう「追認ヲ為スコトヲ得ル時」とは、取消の原因たる情況の止んだ時、すなわち未成年者にあつてはこれが成年に達した時をいい、未成年者であつた者が自己の行為を了知したことは、取消権の消滅時効が進行を始めるについての要件ではない。
「追認ヲ為スコトヲ得ル時」の意義。
民法126条,民法124条1項
判旨
未成年者の行為を理由とする取消権の消滅時効は、未成年者が成年に達した時に進行を開始し、本人が行為を了知したことは要件とならない。
問題の所在(論点)
未成年者が同意なく行った法律行為の取消権につき、民法126条前段の消滅時効の起算点である「追認をすることができる時」に、本人が当該行為を「了知したこと」が必要か。
規範
民法126条にいう「追認をすることができる時」とは、民法124条1項に基づき「取消しの原因となっていた状況が消滅した時」を指す。未成年者の場合、それは成年に達した時を意味し、本人が過去の法律行為の存在を現に了知したことは、消滅時効の進行開始における要件ではない。
重要事実
未成年者であった上告人は、法定代理人の同意を得ずに行った土地売買等の法律行為について、後に取消権を行使しようとした。しかし、成年に達した時から起算して消滅時効期間が経過しているとして、取消権の行使が認められなかった。上告人は、自己の行為を了知した時が時効の起算点となるべきであり、その点について判断を遺脱した原判決には違法があると主張して上告した。
事件番号: 昭和33(オ)116 / 裁判年月日: 昭和37年5月18日 / 結論: 破棄差戻
民法第一八七条第一項は相続による承継にも適用がある。
あてはめ
民法126条および124条1項の文言上、制限行為能力を理由とする取消権の行使については「能力者となったこと」という客観的な状況の変化が基準とされている。したがって、未成年者が成年に達した事実があれば、それ以上に当該行為を主観的に認識しているか否かを問わず、追認が可能な状態になったといえる。本件においても、上告人が成年に達した時点で時効は進行を開始しており、行為の了知に関する主張を判断しなかった原審に判断遺脱の違法はない。
結論
未成年者が成年に達した時に消滅時効は進行を開始する。行為の了知は不要であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
取消権の消滅時効(民法126条)の起算点に関するリーディングケースである。判例は「能力の回復(成年到達)」という客観的事実を重視し、主観的認識を不要とする。答案上は、制限行為能力者の取消権の時効期間を検討する際、追認の要件(124条1項)と連動させて起算点を機械的に成年到達時に設定する論拠として用いる。
事件番号: 昭和46(オ)1035 / 裁判年月日: 昭和47年4月13日 / 結論: 棄却
民法四二六条にいう取消の原因を覚知するとは、債務者が債権者を害することを知つて当該法律行為をした事実を取消権者において知ることを意味し、単に取消権者が詐害の客観的事実を知るだけでは足りず、債務者に詐害の意思のあることをも知ることを要する。
事件番号: 昭和57(オ)548 / 裁判年月日: 昭和58年3月24日 / 結論: 破棄差戻
民法一八六条一項の所有の意思の推定は、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有してい…
事件番号: 昭和33(オ)596 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政上の許可を要する契約が許可を得ないまま合意解除され、その後に法的規制が撤廃された場合、改めて締結された新契約の効力は、旧契約時の不許可に影響されることなく有効である。 第1 事案の概要:上告人A1と被上告人は、昭和25年5月に土地建物の売買契約を締結したが、当時は外国政府の権利取得に外資委員会…