意匠登録の無効審判を請求する利益があるとされた事例。
判旨
意匠登録の無効審判において、権利者から侵害の通告を受け、現に対象物件を製造販売している者は「利害関係人」として請求利益を有する。また、意匠の類否判断は、美観に寄与する意匠全体を比較すべきであり、技術的な作用効果は判断に関係しない。
問題の所在(論点)
1. 意匠権者から権利侵害を指摘され製品を製造販売している者は、無効審判の請求利益を有するか。2. 意匠の類否判断において、物品の持つ作用効果を考慮すべきか。
規範
1. 意匠法上の無効審判(旧意匠法11条、現行法48条1項)における請求利益は、特許権者等から権利侵害を主張され、現に疑義のある製品を製造販売している場合に認められる。2. 意匠の類否判断は、意匠として美観に寄与する点に着目し、細部の差異があっても全体として類似するか否かにより判断すべきであり、物品の持つ技術的な「作用効果」は類否判断に影響しない。
重要事実
意匠権者である上告人は、被上告人が製造販売する器具(通称D一号型)が自己の意匠権を侵害しているとして、販売中止を通告した。これに対し、被上告人は本件意匠登録の無効審判を請求した。上告人は、被上告人が刊行物記載の物(引用意匠)そのものを製造販売しているわけではないから請求利益がないこと、及び原審が作用効果を考慮せず類否判断をしたことは違法であること等を理由に上告した。
あてはめ
1. 被上告人は上告人から販売中止の通告を受けており、かつ現に当該製品を製造販売している。この場合、本件意匠登録の有効性は被上告人の法的地位に直接影響を及ぼすため、利害関係があることは明白である。無効原因の根拠となる刊行物記載の物と同一のものを製造している必要はない。2. 意匠は視覚を通じた美観を保護するものである。原審が両意匠の細部の差異を認めつつも、全体から見て細部の差異に過ぎないと判断し、技術的な殺菌消毒の効果(作用効果)を類否判断から排除したことは正当である。
結論
被上告人は無効審判を請求する利益を有し、また作用効果を考慮せずになされた意匠の類似判断に違法はない。したがって上告は棄却される。
実務上の射程
無効審判の請求人適格(利害関係)の判断枠組みと、意匠の類否判断における「作用効果」の切り離しを明示した重要判例である。答案上は、意匠の類否判断において技術的機能ではなく「視覚を通じた美観」を重視すべき根拠として引用できる。
事件番号: 昭和33(オ)817 / 裁判年月日: 昭和35年4月21日 / 結論: 棄却
自己の有する原登録意匠の類似意匠としての登録出願があつた場合において、出願の意匠がその出願前国内に頒布された刊行物に記載された原登録意匠に類似しない第三者の意匠に類似するときは、右出願意匠は、もはや新規性を有するものとはいい得ず、従つて右意匠が原登録意匠に類似するかどうかの判定をまつまでもなく、その登録は許されないもの…