実用新案の権利範囲確認審判請求の被請求人が当該製品のカタログを印刷配布した事実から販売の意図を推測される以上、製作の具体的計画を有していたかどうかにかかわらず、審判請求の利益があると解すべきである。
実用新案の権利範囲確認審判請求の利益。
旧実用新案法(大正10年法律97号)22条
判旨
特許権侵害の疑いがある製品のカタログを印刷配布し、販売の意図が推認される者に対しては、具体的な製作計画の有無にかかわらず、特許権者は権利範囲確認審判を請求する利益を有する。
問題の所在(論点)
特許権の権利範囲確認審判において、相手方に具体的な製作・販売計画がない場合であっても、特許権者からの審判請求の利益が認められるか。特に、カタログの配布という事実から販売意図を推認できるかが問題となる。
規範
特許法上の権利範囲確認審判(判定制度の趣旨に準ずる)において、請求の利益が認められるためには、対象となる物品の製造販売の意図が客観的に推認される状況があれば足り、必ずしも具体的な製作・販売計画が完成していることまでを要しない。
重要事実
被上告人(特許権者)は、上告人が紫外線殺菌消毒器に関するカタログを印刷・配布したことを捉え、当該物品が自己の特許権の範囲に属することを確認する審判を請求した。上告人は、カタログの配布事実は認めたものの、それは単なる宣伝に過ぎず、具体的な製作計画は存在しないとして、請求の利益の欠如を主張して争った。
あてはめ
上告人が製品カタログを印刷・配布した事実は、客観的に見て当該物品を販売する意図を有していることを推認させるに十分な事情である。上告人はこれが他者の製品であるとか、単なる宣伝目的であるといった反証を行っていない。一度生じた販売意図が廃止された事情がない以上、現在もその意図は継続していると解される。したがって、具体的な製作計画の成否という主観的・内部的な段階にかかわらず、特許権者の権利が侵害される蓋然性があり、紛争解決の必要性が認められる。
結論
カタログの印刷配布により販売意図が推認される以上、具体的な製作計画の有無を問わず、請求人は権利範囲確認審判を請求する利益を有する。
実務上の射程
本判決は、特許権者側から「攻め」の手段として確認を求める際の利益を広く認めたものである。答案上では、確認の利益の有無が問題となる場面において、準備段階(カタログ配布等)であっても「販売意図」が外部に示されていれば、権利侵害の紛争が現実化しているとして、訴えの利益や審判請求の利益を肯定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)465 / 裁判年月日: 昭和37年12月7日 / 結論: 棄却
特許権の範囲確認審判請求の利益の有無は、審決のときを基準とすべきである。