判旨
抵当権実行のための不動産競売手続は非訟事件であり、その裁判は憲法82条が定める公開法廷における対審及び判決を必ずしも必要としない。
問題の所在(論点)
抵当権実行のための不動産競売手続およびこれに対する不服申立ての審理において、公開の法廷による対審および判決を経ないことが憲法82条に違反するか。
規範
憲法82条の規定する公開の法廷における対審及び判決は、純然たる訴訟事件を対象とするものであり、性質上これに当たらない非訟事件については、口頭弁論を経ずに行うことができる。
重要事実
抗告人が、抵当権実行としての不動産競売手続における競落許可決定に対し即時抗告を申し立てた。抗告人は、当該即時抗告事件の審理裁判が口頭弁論(公開の法廷における対審)を経ずに行われることを可能とする民事訴訟法等の規定が、憲法に違反すると主張して争った。
あてはめ
抵当権実行のための不動産競売手続は、実体法上の権利義務を確定するものではなく、あらかじめ存在する抵当権の実行という手続的側面を有する非訟事件である。非訟事件の裁判は、本質的に裁判所の後見的・裁量的判断が求められる手続であり、対立する当事者間の攻撃防御を前提とする純然たる訴訟事件とは性質を異にする。したがって、口頭弁論を経ることなく審理を行う民事訴訟法等の規定は、憲法の要求する公開原則を潜脱するものではない。
結論
抵当権実行のための不動産競売手続は非訟事件であり、口頭弁論を要しないとする規定は憲法に違反しない。よって、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
憲法82条の「対審及び判決」の対象を純然たる訴訟事件に限定した判例(最大決昭35・7・6)の流れを汲むものである。答案上は、非訟事件手続の合憲性を論じる際の根拠として、当該手続の非訟事件としての性質を指摘した上で、本判例を引用して公開原則の適用除外を基礎づける。
事件番号: 昭和37(ク)289 / 裁判年月日: 昭和37年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抵当権実行のための不動産競売手続は非訟事件であり、その裁判に際して公開の法廷における対審や判決の手続を経ることは憲法上要求されない。したがって、競落許可決定に対する抗告審において口頭弁論を経ずに審理・裁判を行うことは合憲である。 第1 事案の概要:抵当権の実行として行われた不動産競売手続において、…
事件番号: 昭和42(ク)341 / 裁判年月日: 昭和42年11月14日 / 結論: 棄却
不動産競売事件の競落許可決定に対する即時抗告事件について、公開の法廷における口頭弁論にもとづかないで抗告を棄却する旨の決定をしても、憲法第八二条に違反しない。
事件番号: 昭和35(ク)174 / 裁判年月日: 昭和35年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の任意競売手続における競落許可の裁判が、口頭弁論や審尋を必須としない決定手続によってなされることは、憲法32条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:不動産の任意競売手続においてなされた競落許可決定に対し、抗告人が、当該手続が憲法32条(裁判を受ける権利)および憲法29条(財産権の保障…
事件番号: 昭和34(ク)47 / 裁判年月日: 昭和34年3月12日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に最高裁判所への抗告が許容されている場合に限られる。民事事件においては、特別抗告(旧民訴法419条の2、現行336条)の要件を満たさない限り、最高裁判所への抗告は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、競落許可決定における目的不動産の表示が…
事件番号: 昭和36(ク)160 / 裁判年月日: 昭和36年6月6日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては特別抗告のみがこれに該当する。憲法違反を主張して特別抗告を申し立てる際には、単なる違憲の主張に留まらず、具体的な違憲事由を明示しなければ不適法となる。 第1 事案の概要:抗告人らは、原決定が憲法29条(…