代えうる。
商法第七五条に規定する「他の社員の過半数の決議」は「他の社員全員の同意」をもつて代えうるか。
商法75条
判旨
合名会社の業務執行社員が会社を代表して自身と取引を行う場合(自己取引)、他の社員全員の同意があれば商法75条(現行会社法595条1項1号等)の趣旨に照らし有効である。
問題の所在(論点)
合名会社の代表社員が自己と会社との間で取引を行う際、他の全社員の同意がある場合に、当該取引は有効に成立するか。旧商法75条(利益相反取引の制限)の適用範囲が問題となる。
規範
合名会社の社員が会社を代表して自己または第三者のために会社と取引(自己取引)を行うことは、利益相反の危険があるため、原則として禁止される。しかし、当該社員以外の全社員が当該取引に同意している場合には、会社の利益が不当に害されるおそれがないため、当該取引は有効となる(旧商法75条、現行会社法595条1項1号参照)。
重要事実
上告会社(合名会社)の業務執行社員であった被上告人が、個人として会社を代表し、自らおよび訴外の者との間で清算金の支払いに関する約定を締結した。この際、被上告人以外の社員全員が当該約定の内容について同意を与えていた。その後、会社側が当該約定の効力を争い、上告に至った。
あてはめ
本件清算金の支払いに関する約定は、会社と社員個人との間の利害が対立する「取引」にあたる。もっとも、本件では上告会社の社員のうち、当事者である被上告人を除く社員全員が右約定に同意している。このような全社員の同意がある状況下では、社員間の信頼関係に基づく合名会社の性質上、会社利益の保護は図られており、同条の制限に触れるものではないと解される。
結論
被上告人と上告会社との間の約定は有効であり、上告会社は清算金の支払義務を負う。本件上告は棄却される。
実務上の射程
持分会社における利益相反取引の有効要件として、社員全員の同意が決定的な判断要素となることを示した射程の長い判例である。現行会社法595条においても、定款に別段の定めがない限り「他の社員の過半数の決定」が必要とされるが、本判決のように全員の同意があれば当然に有効性が認められる。実務上・答案上は、会社利益の保護と全社員の意思合致を対比させて論じる際に活用すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)460 / 裁判年月日: 昭和42年12月15日 / 結論: 破棄差戻
かりに株式会社の清算手続が清算人ひとりですることができるとしても、その清算人は、特段の事情のないかぎり清算会社と取引することができず、これに違反する取引は無効である。