民法上の組合の清算人は、組合員の選定当事者として当事者適格を持ちうるが、組合員からいわゆる任意的訴訟信託を受け、自己の名で訴訟を担当することは許されない。
民法上の組合の清算人に対する組合員の任意的訴訟信託の適否。
民訴法46条,民訴法47条,民法688条1項,民法78条
判旨
民法上の組合の清算人は、組合員の合意による授権があっても、自己の名において組合の債権を請求する任意的訴訟担当を行うことはできない。このような場合には、選定当事者制度(民訴法30条)によるべきであり、これによらずに訴訟担当を認めることは許されない。
問題の所在(論点)
民法上の組合の清算人が、組合員からの授権に基づき、自己の名で組合債権の取立訴訟を提起すること(任意的訴訟担当)の可否、および当事者適格の有無。
規範
任意的訴訟担当は、法に明文の規定がある場合を除き、原則として許されない。民法上の組合における清算人が、組合員から自己の名において裁判上の行為を行う権限を授与されたとしても、選定当事者(民訴法30条)の要件を充足し、かつ適法な証明(民訴規則15条等)がなされない限り、当事者適格は認められない。
重要事実
農産物加工組合(民法上の組合)が解散し、組合員の一人である被上告人が清算人に選任された。被上告人は、組合員らから「自己の名において裁判上・裁判外の行為をなす権限」を授与されたと主張し、組合員である上告人に対し、清算残金の支払を求める訴訟を自己の名で提起した。
あてはめ
被上告人は清算人として授権を受けているが、組合の代理人として組合名義で訴訟を提起するのではなく、自己の名で提起している。このような訴訟形態は、実質的に任意的訴訟担当の信託にあたる。しかし、民事訴訟法が選定当事者制度を設けている以上、同条の要件を回避して訴訟担当を認めることはできない。本件では、被上告人が選定当事者であることを証する書面の提出もなく、適法な選定があったとは認められないため、当事者適格を欠く。
結論
被上告人の当事者適格を認め、本案判決を行った原判決は違法である。被上告人は当事者適格を欠くため、本件訴えは却下されるべきである。
実務上の射程
任意的訴訟担当の原則禁止(弁護士代用の禁止・信託法上の制限)を前提としつつ、民法上の組合において選定当事者制度を利用すべき場面を明確化した。答案上は、組合の当事者能力(民訴法29条)を否定する立場に立つ場合、清算人による訴訟追行の可否を論じる際の決定的な根拠となる。
事件番号: 昭和63(オ)1134 / 裁判年月日: 平成4年1月24日 / 結論: 棄却
合名会社の解散後に死亡した社員の共同相続人の全員が社員である場合においても、遺産の分割がされ、死亡した社員の持分の共有関係が解消されるまでの間に、相続人が清算に関して右持分に基づく権利を行使するには、商法一四四条の規定に従い、そのうち一人を権利行使者と定めることを要する。