判旨
解散後の組合においては、組合員の死亡は脱退原因(民法679条1号)とはならず、死亡した組合員の有する残余財産分配請求権は、その相続人に当然に承継される。
問題の所在(論点)
組合が解散した後に組合員が死亡した場合、民法679条1号(旧679条1項1号)が適用されて「脱退」が生じるか。あるいは、解散後の清算手続における残余財産分配請求権が相続人に承継されるにとどまるか。
規範
民法が組合員の死亡を脱退原因とした趣旨は、組合員の相続人が当然に組合員となることが組合員相互の信頼関係を害することを防ぐ点にある。この規定は組合の存続を前提とするものであり、既に解散した組合においては、死亡を脱退原因として持分の払戻し等を認める必要はなく、死亡した組合員の有する残余財産分配請求権の相続を認めれば足りる。
重要事実
上告人は、他の全組合員(D、E、F)の承諾を得て組合共有の金員を借用した。その際、返還債務の担保として、全組合員の同意の下、組合員の一員であるDを受取人とする手形を振り出した。その後、組合が解散した後に組合員が死亡したが、原審はこれを脱退原因とはせず、相続人による権利承継を肯定したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
本件では、組合は既に解散しており、もはや組合の存続を前提とした相互の信頼関係の維持を考慮する必要はない。したがって、死亡を理由とする脱退およびそれに伴う持分の払戻し(民法681条)という構成を採る必要はなく、清算段階における実質的な権利である「残余財産分配請求権」が相続人に相続されると解するのが相当である。また、手形債務についても、受取人Dへの単独行使につき予め全組合員の同意があったといえる。
結論
解散後の組合員死亡は脱退原因にあたらず、相続人は被相続人たる組合員が有していた残余財産分配請求権を承継する。
実務上の射程
組合員の死亡と脱退(民法679条)の規定が、清算中の組合には適用されないことを明確にした射程を有する。答案上は、組合員の死亡による承継の可否が問われた際、当該組合が「存続中」か「解散後(清算中)」かを区別する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和32(オ)693 / 裁判年月日: 昭和36年7月31日 / 結論: 破棄自判
民法上の組合の代表者が、組合のために、その組合代表者名義で約束手形を振出した場合には、同組合の組合員は、共同振出人として、同手形について合同してその責を負うものと解するのが相当である。