唯一の証拠方法であつても、それによつて立証しようとする事実の主張がなされていない以上、これを採用しなくても違法でない。
誰一の証拠方法の申請の却下が適法とされた事例。
民訴法259条
判旨
当事者が主要事実について具体的な主張を行っていない場合、その事実を立証するための証拠調べ(本人尋問等)を申請しても、裁判所がこれを採用しないことは適法である。
問題の所在(論点)
当事者が主要事実(本件では暴利行為の要件となり得る窮迫等の事情)を具体的に主張していない場合に、その事実を立証するための唯一の証拠方法の申請を却下することは、証拠調べに関する裁量の逸脱・濫用となるか。
規範
裁判所は、当事者が主張していない事実を認定の基礎に置くことはできない(弁論主義第1余白)。したがって、ある事実の存否を証明するための証拠調べは、当該事実が当事者によって具体的に主張されていることを前提とする。また、証拠の採否は原則として裁判所の裁量に属するが、唯一の証拠方法である場合でも、立証すべき事実の主張を欠くときにはこれを却下することができる。
重要事実
上告人は被上告人から15万円を借り受けたが、その際、上告人に「窮迫その他特別の事情」があったと主張して争った。しかし、記録上、原審において上告人からこの点に関する具体的な事実の主張がなされた形跡はなかった。上告人は、当該事実を立証するために「唯一の証拠方法」として控訴人(上告人)本人の尋問を申請したが、原審はこれを採用しなかったため、上告人が違法を訴えた事案である。
事件番号: 昭和42(オ)427 / 裁判年月日: 昭和42年12月19日 / 結論: 棄却
仮登記原因の疎明の有無は、仮登記仮処分命令の効力に消長をきたすものではない。
あてはめ
本件において、上告人は借入れ当時の窮迫等の特別の事情を立証しようとしたが、前提となる具体的な事実の主張自体がなされていない。証拠調べは、争点として顕在化した事実の存否を確定するために行われるものであるから、主張のない事実について証拠を調べる必要はない。したがって、たとえ本人尋問が当該事実に関する唯一の証拠方法であったとしても、主張の欠如を理由としてこれを採用しない原審の判断は当然であり、裁量の範囲内といえる。
結論
主要事実の主張がない以上、唯一の証拠方法であっても却下は適法である。原審の判断に違法はなく、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
弁論主義の下での「唯一の証拠の原則」の限界を示す。実務上、証拠調べを求めるには、まずそれによって証明すべき具体的な事実を主張(要件定義)する必要があることを再確認する判例である。答案上は、証拠調べの必要性や弁論主義との関係を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…
事件番号: 昭和38(オ)295 / 裁判年月日: 昭和39年10月27日 / 結論: 棄却
代理人が本人のためにする意思をもつて買受契約を締結する当時は、本人のためにすることを明示しなかつたが、後に代金を支払うときには、買主が本人であることを明らかにする等判示のような事情があるときは、「本人ノ為メニスルコト」を表示して契約をしたものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和32(オ)749 / 裁判年月日: 昭和35年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決言渡期日に出頭した当事者が延期告知後に退廷した場合であっても、指定された新期日の告知の効力は当該当事者に及ぶ。また、弁論の公開の有無は、口頭弁論の方式に関する事項として調書によってのみ証明される。 第1 事案の概要:上告人は、昭和31年3月27日の判決言渡期日に出頭したが、言渡延期の告知を受け…
事件番号: 昭和34(オ)871 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において、控訴人が第一審の口頭弁論の結果および控訴の趣旨を陳述した場合には、それによって弁論および審判の範囲が画定され、相手方の反対申立てを要しない。 第1 事案の概要:上告人(控訴人)は、原審(控訴審)の第一回口頭弁論において、第一審における口頭弁論の結果を陳述し、あわせて控訴の趣旨を陳述…