必ずしも尋問しなければならないものではない(昭和二七年一二月二五日第一小法廷判決、民集六巻一二号一二四〇頁参照)。
第一審において尋問した証人につき控訴審でさらに尋問の申出がなされた場合に必ずこれを尋問しなければならないか。
民訴法187条3項
判旨
控訴審において、第一審で尋問済みの証人について当事者がさらに尋問の申出をしたとしても、裁判所は必ずしもその尋問を行う義務を負わない。
問題の所在(論点)
控訴審において、第一審で尋問済みの証人について当事者から尋問の申出があった場合、裁判所は民事訴訟法上の更新権の行使等として必ずその尋問を行わなければならないか。
規範
民事訴訟法249条3項(旧187条3項)は、直接主義の観点から単独裁判官の更迭や合議体裁判官の過半数の更迭があった場合に、従前尋問した証人について再尋問の申出があれば裁判所に尋問義務を課している。しかし、この規定は控訴審において第一審の証人を再尋問する場合にまでは適用されない。したがって、控訴審における再尋問の要否は裁判所の裁量に委ねられる。
重要事実
被上告人(控訴人)が土地の所有権取得および管理委託を主張して争った事案。第一審において証人尋問が行われたが、控訴審において上告人(被控訴人)が同一の証人について再度尋問の申出を行った。控訴審裁判所はこの申出を採用せずに判決を下したため、上告人はこれが旧民事訴訟法187条3項(現249条3項)に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和36(オ)1377 / 裁判年月日: 昭和37年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において初めて予備的請求を追加・申立てることは、当事者の審級の利益を奪うものではなく、適法である。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人(被告)に対し、本件建物に関する権利を主張して訴えを提起した。第一審の判断を経て、控訴審(原審)において初めて予備的請求の申立てを行ったところ、原審…
あてはめ
民事訴訟法249条3項(旧187条3項)の文言上、同条が予定しているのは同一審級内での裁判官の更迭に伴う更新手続である。控訴審は続審制をとっており、第一審での証拠調べの結果を当然に裁判の基礎とすることができる。そのため、控訴審において第一審と異なる裁判官が審理を行う場合であっても、法律上の「更迭」には当たらず、第一審証人の再尋問を義務付ける規定は存在しない。本件において控訴審が再尋問を行わなかったことは、同条の解釈上、何ら違法ではない。
結論
控訴審において第一審証人の再尋問の申出があっても、裁判所は必ずしも尋問を行う必要はない。上告棄却。
実務上の射程
第一審から控訴審への移行は「更迭」にあたらないことを明示した射程の明確な判例である。答案上は、直接主義の例外または控訴審の続審的性格を論じる際、裁判所の証拠調べの裁量を基礎付ける根拠として活用できる。特に控訴審の証拠調べ(民訴法297条、249条)の文脈で、第一審証人の再尋問を却下する裁判所の判断が適法であることの根拠となる。
事件番号: 昭和36(オ)207 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審判決の理由記載において、第一審判決を引用することは民事訴訟法の規定に基づき適法であり、控訴審の独立した裁判を妨げるものではない。 第1 事案の概要:上告人は、控訴審判決が理由の記載において第一審判決を引用したことについて、それが控訴審の不羈独立の裁判を妨げるものであると主張して上告を申し立て…
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和30(オ)573 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証言の一部に事実に符合しない部分があっても、それだけで直ちに他の部分が信用できなくなるものではなく、証拠の採否は事実審の専権に属する。 第1 事案の概要:上告人は、原審における事実認定に関し、経験則に反する認定があること、および採証の法則に違反して事実認定が行われたことを主張した。具体的には、証言…
事件番号: 昭和32(オ)415 / 裁判年月日: 昭和34年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の更迭に伴い弁論の更新がなされた場合において、当事者が従前の証人につき再尋問の申出をしない限り、更新前の証拠調べの結果を判決の基礎とすることは適法である。 第1 事案の概要:上告人は、建物の譲渡を受けたとして所有権を主張したが、原審(控訴審)はこれを認めず請求を棄却した。原審の審理過程におい…