判旨
裁判官の更迭に伴い弁論の更新がなされた場合において、当事者が従前の証人につき再尋問の申出をしない限り、更新前の証拠調べの結果を判決の基礎とすることは適法である。
問題の所在(論点)
裁判官の過半数が更迭した場合、弁論の更新手続において当事者からの申出がないときでも、裁判所は当然に証人の再尋問を行わなければならないか。
規範
裁判官が更迭した場合には、民事訴訟法上の弁論の更新手続を経る必要がある。更新手続が適法に行われ、かつ、裁判官の過半数が更迭した場合であっても、当事者から従前尋問した証人に対する再尋問の申出がなされない限り、受訴裁判所は更新前の証拠調べの結果を基礎として事実認定を行うことができる。
重要事実
上告人は、建物の譲渡を受けたとして所有権を主張したが、原審(控訴審)はこれを認めず請求を棄却した。原審の審理過程において、裁判所の構成員たる裁判官に度重なる変更が生じていた。もっとも、裁判官の変更がある都度、適法な弁論の更新手続は行われていた。上告人は、裁判官の過半数が更迭したにもかかわらず従前の証人に対する再尋問が行われなかった点に手続上の違法があるとして上告した。
あてはめ
記録によれば、原審において裁判所の構成に変更があった際、その都度適法な弁論の更新手続が行われている。また、裁判官の過半数が更迭した事態が生じているものの、当事者(上告人)から従前尋問済みの証人について更に尋問することの申出がなされた事跡は認められない。したがって、直接主義の観点から再尋問を要する特別の事情はなく、更新前の証拠調べ結果に基づき事実認定を行うことに違法はない。
結論
弁論の更新が適法になされ、再尋問の申出もなかった以上、原判決に手続上の違法は認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和45(オ)514 / 裁判年月日: 昭和47年5月4日 / 結論: 棄却
民訴法一八七条三項は、本人尋問には準用されない。
裁判官の交代により直接主義が後退する場面において、弁論の更新(形式的な要旨の陳述等)を尽くせば、再尋問は当事者の申出を待てば足りるという実務上の運用を肯定する。司法試験の答案上は、直接主義の例外(民訴法249条2項)に関連して、弁論の更新の有効性と再尋問の要否を論じる際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和36(オ)303 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: 棄却
必ずしも尋問しなければならないものではない(昭和二七年一二月二五日第一小法廷判決、民集六巻一二号一二四〇頁参照)。
事件番号: 昭和34(オ)868 / 裁判年月日: 昭和35年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有権の帰属に関し、家賃取立の実績等の事実が認められる場合であっても、他の証拠により導かれる所有権の推定を直ちに覆すに足りるものではない。 第1 事案の概要:本件建物の所有権の帰属をめぐり、上告人(控訴人)は、自らが家賃の取立を行ってきた事実などを主張し、証拠を提出して自らの所有を主張した。…
事件番号: 昭和29(オ)285 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
一 民訴第一八七条第二項の手続を履践すべき場合、当事者の一方が口頭弁論期日に欠席したときは、裁判長は出頭した当事者に双方に係る従前の口頭弁論の結果を陳述させることができる。 二 裁判官の更迭があつた場合、口頭弁論調書に、当事者の一方だけが出頭し「前回までの口頭弁論調書にもとづいて従前の口頭弁論の結果を陳述」したとの記載…