判旨
憲法判断は、具体的事件を解決するために必要な限度で行われるべきであり、前提となる私法上の権利関係が認められない場合には、憲法違反の有無を判断すべきではない。
問題の所在(論点)
前提となる私法上の取引の存在が否定されている場合であっても、最高裁判所は民事訴訟法(当時の旧法)上の特別抗告の枠組みにおいて、国の処分の合憲性を判断すべきか。
規範
裁判所が合憲性を審査するには、具体的争訟において、その判断を行うことが解決のために不可欠でなければならない。前提となる事実関係や私法上の権利の存否について疎明・立証がない場合には、憲法判断を回避すべきである。
重要事実
抗告人は、国との取引(売買契約または売買予約)を原因とする仮登記仮処分命令を申請した。第一審および原審は、当該取引の存在について疎明がないと判断し、申請を却下した。これに対し抗告人は、本件は国の処分の合憲性を審査する性格を有するものであるから、最高裁は職権で憲法判断を行うべきであると主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件における申請は、仮登記仮処分命令を求めるものであり、その前提として国との取引が存在することが不可欠である。しかし、原審は当該取引の存在自体を否定しており、憲法判断をなすべき前提を欠いている。したがって、原審が憲法判断を行わなかったことに違憲の瑕疵はなく、最高裁において独自の憲法判断を行う必要性も認められない。抗告人の主張は独自の事実に依拠するものであり、特別抗告の要件を満たさない。
結論
本件抗告は民事訴訟法所定の特別抗告の要件を満たさず、不適法として却下される。
実務上の射程
司法消極主義ないし憲法判断回避の原則(付随的違憲審査制の基本的性格)を説明する際の実例として機能する。具体的事案が解決できない状態(前提事実の不備等)では、抽象的な憲法審査は行わないという裁判所の態度を示すものである。
事件番号: 昭和32(ヤ)32 / 裁判年月日: 昭和36年4月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】仮登記仮処分命令の申請において、前提となる取引の存在(被保全権利)が疎明されない場合には、国の処分の違憲性という憲法判断を行う必要はなく、判断を示さないことに再審事由は認められない。 第1 事案の概要:申立人は、国との取引(売買契約または売買予約)を原因とする土地の仮登記仮処分命令を申請した。しか…
事件番号: 昭和50(ク)71 / 裁判年月日: 昭和50年4月24日 / 結論: 却下
簡易裁判所の仮処分申請却下決定に対する抗告につき地方裁判所がした抗告棄却の決定に対しては、再抗告は許されない。
事件番号: 昭和25(ク)69 / 裁判年月日: 昭和26年1月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民訴法に特別の定めがある場合に限り許され、その理由は原決定の憲法判断の不当性に限られる。単なる法令違背を憲法違反と主張することは適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、不動産登記法の裁判上の手続において非訟事件手続法19条の適用を否定した原決定に対し、法…
事件番号: 昭和25(ク)40 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告が許されるのは、憲法違反を理由とする場合に限られる。単なる法令解釈の不当を憲法違反と主張することは、適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、相手方の占有を解いて執行吏に保管させ、現状変更を禁止する仮処分決定を得ていた。その後、相手方が現状を変更したことを理由に…
事件番号: 昭和24(ク)67 / 裁判年月日: 昭和24年10月31日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に最高裁判所の権限に属するものと定めた場合に限り許容される。具体的には、旧民事訴訟法419条の2(現行336条)の特別抗告のように、憲法違反を理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てたが、その抗告申立書の内容から、…