判旨
仮登記仮処分命令の申請において、前提となる取引の存在(被保全権利)が疎明されない場合には、国の処分の違憲性という憲法判断を行う必要はなく、判断を示さないことに再審事由は認められない。
問題の所在(論点)
仮登記仮処分命令申請の却下決定に対する特別抗告において、被保全権利の疎明がないことを理由に憲法判断を示さなかったことが、民事訴訟法上の再審事由(判断の遺脱等)に該当するか。
規範
裁判所が憲法判断を行うためには、その判断を行うべき前提となる具体的な権利関係(被保全権利等)の存在が認められる必要がある。前提事実が否定される場合には、付随的違憲審査制の観点から、実質的な憲法判断に踏み込む必要はない。
重要事実
申立人は、国との取引(売買契約または売買予約)を原因とする土地の仮登記仮処分命令を申請した。しかし、第一審および抗告審において、右取引の事実について疎明がないと判断され、申請は却下された。申立人は、本件申請が「国の処分に対する合憲審査要求」の性格を有するため、最高裁判所は職権で憲法判断を示すべきであったとして、判断の遺脱を理由に再審を申し立てた。
あてはめ
申立人の申請は、形式的には仮登記仮処分命令の申請であるが、その実質において国の処分の合憲性を審査させるものであったとしても、司法審査の対象は具体的な紛争に限られる。本件では、前提となる国との取引の存在そのものが疎明されず否定されている。したがって、前提事実が欠けている以上、最高裁判所が国の処分の合憲性について判断を下さなかったのは当然の帰結であるといえる。
結論
最高裁判所が憲法判断を示さなかったことに過誤はなく、民事訴訟法上の再審事由は認められないため、本件再審申立を却下する。
実務上の射程
事件番号: 昭和35(ク)364 / 裁判年月日: 昭和36年1月20日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】憲法判断は、具体的事件を解決するために必要な限度で行われるべきであり、前提となる私法上の権利関係が認められない場合には、憲法違反の有無を判断すべきではない。 第1 事案の概要:抗告人は、国との取引(売買契約または売買予約)を原因とする仮登記仮処分命令を申請した。第一審および原審は、当該取引の存在に…
司法審査の対象が「法律上の争訟」に限定されるという付随的違憲審査制の基本原則を確認するものである。答案上では、具体的権利義務に関する争い(被保全権利の疎明等)が認められない場合に、憲法判断の必要性(裁判の欠缺の有無)を否定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(ヤ)5 / 裁判年月日: 昭和32年4月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】確定した決定に対する再審の申立ては、民事訴訟法(旧法)所定の再審事由を主張するものでない限り、適法な申立てとは認められず却下される。 第1 事案の概要:申立人は、仮処分申請却下決定に対する抗告却下決定(東京高裁昭和31年4月4日決定)及びこれに対する抗告却下決定(最高裁昭和31年6月29日決定)に…
事件番号: 昭和32(ヤ)12 / 裁判年月日: 昭和32年11月27日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所の抗告却下決定に対する再審の申立てにおいて、原決定の判断に遺脱があるとの主張がなされたが、原決定の判断は相当であり判断遺脱には当たらないとして、申立てが却下された事例である。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所が昭和32年6月11日に行った抗告却下の決定(昭和32年(ク)第78号競落…
事件番号: 昭和25(ク)40 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告が許されるのは、憲法違反を理由とする場合に限られる。単なる法令解釈の不当を憲法違反と主張することは、適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、相手方の占有を解いて執行吏に保管させ、現状変更を禁止する仮処分決定を得ていた。その後、相手方が現状を変更したことを理由に…
事件番号: 昭和24(ク)67 / 裁判年月日: 昭和24年10月31日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に最高裁判所の権限に属するものと定めた場合に限り許容される。具体的には、旧民事訴訟法419条の2(現行336条)の特別抗告のように、憲法違反を理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てたが、その抗告申立書の内容から、…