判旨
事実認定における証拠の取捨選択は裁判所の自由な裁量に属し、特定の証拠を採用しない理由を説示しなかったとしても、直ちに法令違背や公平を欠く違法とはならない。
問題の所在(論点)
民事訴訟法上の自由心証主義において、裁判所が証拠を排斥する際にその理由を判決書に記載する必要があるか、また証拠の取捨選択が上告理由となるかが問題となった。
規範
事実裁判所は、証拠の取捨判断をなすについては自由な裁量を認められており、特段の事情がない限り、採用しない証拠についてその理由を説示する義務までは負わない。
重要事実
上告人と被上告人の母Dが男女の関係にあり、Dが被上告人を分娩した。原審は、証拠に基づき被上告人が上告人とDの間の嫡出でない子であることを認定した。これに対し上告人は、原審が自己の提出した証拠を採用せず、かつ採用しない理由を明示しなかったことは不当であり、憲法違反や法令違背に当たると主張して上告した。
あてはめ
原判決は、証拠に基づき被上告人が両者の間の子であることを推認させる事情を適切に認定しており、その認定過程は是認できる。証拠の取捨判断は裁判所の自由な裁量に委ねられているため、上告人が主張する証拠を採用しなかったこと、およびその不採用の理由を具体的に説示しなかったことは、判決に影響を及ぼすべき法令の違反や公平の原則に反するものとはいえない。上告人の主張は、実質的には原審の専権に属する事実認定を非難するものにすぎない。
結論
証拠の取捨選択および不採用理由の不説示は違法ではなく、原審の事実認定を維持し、上告を棄却する。
実務上の射程
自由心証主義の原則を確認したものであり、判決書における証拠の説示義務の限界を示す。実務上、証拠不採用の理由が一切不明であっても、認定された事実と証拠の間に合理的な関連性がある限り、理由不備を理由とする上告は困難であることを示唆している。
事件番号: 昭和36(オ)36 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】認知請求の訴えにおいて、懐胎期間中の継続的な情交関係、出生後の金品提供、他男性との交友関係の不存在、および鑑定結果を総合して、嫡出でない子と父との間の親子関係を認めることができる。 第1 事案の概要:被告(男)は、原告の母Dと昭和15年頃から情交関係を結び、Dに仕事の取締りや炊事をさせるなど事実上…