判旨
認知請求の訴えにおいて、懐胎期間中の継続的な情交関係、出生後の金品提供、他男性との交友関係の不存在、および鑑定結果を総合して、嫡出でない子と父との間の親子関係を認めることができる。
問題の所在(論点)
民法787条に基づく認知の訴えにおいて、事実上の夫婦同然の生活実態や出生後の扶助、他男性との関係否定、科学的鑑定等の事実に基づき、実親子関係を認めることができるか。
規範
認知の訴え(民法787条)における親子関係の存否は、懐胎可能な時期における情交関係の有無、その関係の継続性、他男性との交友関係の不存在、出生前後の父としての振る舞い(金品提供等)、および血液型鑑定等の科学的証拠を総合考慮して、実親子関係の蓋然性の有無により判断する。
重要事実
被告(男)は、原告の母Dと昭和15年頃から情交関係を結び、Dに仕事の取締りや炊事をさせるなど事実上の夫婦のように振舞っていた。昭和19年5月頃、Dは原告を懐胎し、被告は同年7月頃にその事実を知った。その後も被告はDのもとに通い続け、昭和20年2月の原告出生後も約1年間交情を重ね、Dに対し千円余の金品を与えていた。なお、懐胎当時にDが被告以外の男と情交した事実は認められず、鑑定結果も被告の子であることを否定しないものであった。
あてはめ
まず、被告とDは懐胎前後の数年間、仕事や家事を共にするなど事実上の夫婦同然の生活を送り、継続的な情交関係にあったといえる。次に、被告はDの懐胎を知りながら関係を継続し、出生後も金品を交付していることから、自らの子であることを認識していたと評価できる。さらに、Dが他の男性と関係を持った形跡はなく、鑑定結果も踏まえれば、被告が原告の父であるとの蓋然性は極めて高い。したがって、原告は被告によって懐胎されたものと認められる。
結論
原告は被告によって懐胎されたものと認められるため、認知請求は正当であり、被告と原告との間に実親子関係が認められる。
実務上の射程
本判決は、DNA鑑定が未発達な時代の事案であるが、情交実態や出生後の父としての行動から親子関係を推認する枠組みを示している。現代の答案作成においては、客観的な科学的鑑定結果(DNA鑑定等)を主軸としつつ、本判決が重視した情交の継続性や他男性の介在否定、出生前後の事情を補足的に加味して親子関係を論証する際に有用である。
事件番号: 昭和39(オ)976 / 裁判年月日: 昭和40年2月11日 / 結論: 棄却
(省略)