対抗問題が生ずる(昭和三三年一〇月一四日第三小法廷判決、民集一二巻一四号三一一一頁参照)。
家督相続と生前贈与との間に対抗問題が生ずるか。
民法177条
判旨
被相続人が生前に不動産を贈与したが登記未了のまま相続が開始した場合、相続人から当該不動産を譲り受けて登記を具備した第三者に対し、受贈者は所有権の取得を対抗できない。
問題の所在(論点)
被相続人から生前に不動産の贈与を受けたが登記未了である者と、被相続人の死後にその相続人から当該不動産を譲り受け登記を具備した第三者との優劣(民法177条の適用の有無)。
規範
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従い、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない(民法177条)。被相続人が生前に不動産を譲渡しても、登記を完了しない間に相続が開始した場合、被相続人の権利義務を包括承継した相続人から譲渡を受けた第三者との関係は、二重譲渡と同様の対抗問題(177条)として処理される。
重要事実
被相続人Dは、その生前に本件不動産を上告人に対して贈与したが、その所有権移転登記は未了であった。その後、Dが死亡し、Eが家督相続し、さらにFがこれを相続した。相続人Fは本件不動産について保存登記を行い、これを被上告人へと譲渡し、その旨の登記を完了させた。受贈者である上告人は、登記を有する被上告人に対し、贈与による所有権取得を主張して争った。
事件番号: 昭和32(オ)580 / 裁判年月日: 昭和34年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被相続人から生前贈与を受けた者と、相続人から重ねて贈与を受けた者との関係は、対抗関係(民法177条)に立ち、相続人は無権利者とはならない。 第1 事案の概要:被相続人Dは、生前に本件土地を上告人(第一譲受人)に贈与した。その後、Dが死亡し、Eが家督相続人となった。Eは本件土地を被上告人(第二譲受人…
あてはめ
上告人はDから本件不動産の贈与を受けたが、その旨の登記を経由していない。一方、被上告人は、Dを包括承継した家督相続人(EおよびF)から本件不動産を譲り受け、かつその登記を具備している。相続人は被相続人の権利義務を承継する立場にあるから、相続人からの譲受人は、被相続人からの譲受人(本件では受贈者)と対抗関係に立つ。したがって、登記を先に備えた被上告人が優先し、上告人は自身の所有権取得を被上告人に対抗することができない。また、相続人が当該不動産につき保存登記をすることも適法である。
結論
被相続人からの受贈者は、相続人からの譲受人に対し、登記がない限り、その所有権の取得を対抗できない。
実務上の射程
「相続と登記」の基本判例であり、遺産分割による権利取得等と対比されるべき典型論点である。被相続人を起点とした二重譲渡類似の構成(対抗問題)を採るのが判例の確立した立場であり、相続人が実質的な権利を持たない場合でも、登記欠缺を主張する正当な利益を有する「第三者」に該当することを前提とする。答案上は、相続人が被相続人の地位を承継したことを指摘しつつ、177条の対抗関係に引き込む必要がある。
事件番号: 昭和34(オ)468 / 裁判年月日: 昭和36年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法177条の「第三者」とは、不動産に関する物権の得喪変更の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいい、他人の権利を侵害した不法行為者はこれに含まれない。 第1 事案の概要:被上告人は、兄であるDから本件山林の贈与を受け、その所有権を物権的に取得した。一方で、上告人らはDから本件山林を買…
事件番号: 昭和39(オ)1444 / 裁判年月日: 昭和40年5月25日 / 結論: 棄却
登記簿上主たる建物の附属建物として同一登記用紙に登記されているが、実体上は主たる建物とは別個独立である建物が、登記後に、滅失した場合には、当該登記中右のいわゆる附属建物に関する部分は無効となると解すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)740 / 裁判年月日: 昭和34年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】時効は、時効によって直接に利益を受ける者又はその承継人がこれを援用した場合、右以外の者も時効による権利の取得を主張し得る。 第1 事案の概要:上告人は、Dが取得時効を援用したこと、あるいはEその他の者が取得時効を完成させたことを前提として、自らの権利を主張した。しかし、記録上、Dが取得時効を援用し…
事件番号: 昭和37(オ)804 / 裁判年月日: 昭和38年11月15日 / 結論: 棄却
証拠を総合して事実を認定するに際し、証人の供述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在していても、その部分を証拠として採用しなかつたことを判文上明示しなければならないものではない。