判旨
借地法9条(現借地借家法25条)の一時使用目的の借地権に関し、賃貸人が必要とする場合に建物を撤去して土地を明け渡す旨の特約は有効であり、その「必要」性は必ずしも客観的かつ妥当な必要性がある場合に限定されない。
問題の所在(論点)
借地法9条の一時使用目的の借地権において、「賃貸人が必要とする場合」に明け渡す旨の特約の有効性と、その「必要」性の判断基準が問題となる。
規範
借地法9条(現借地借家法25条)に規定される「一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合」に該当するか否かは、賃貸借の目的、期間、建物の種類、特約の内容等の諸般の事情を総合して判断される。また、当該契約における明渡し特約の効力に関し、賃貸人の「必要」を条件とする要件は、当事者間の合意内容に基づき解釈されるべきであり、当然に客観的な妥当性まで要求されるものではない。
重要事実
賃借人(上告人)と賃貸人(被上告組合)との間で土地の賃貸借契約が締結された。その際、「賃貸人において必要がある場合には、賃借人は建物を撤去して土地を明け渡すべき」旨の特約(本件特約)が付されていた。その後、賃貸人は本件特約に基づき、昭和27年9月に内容証明郵便をもって明渡しを請求した。一審および原審は、本件賃貸借が借地法9条の「一時使用目的」に該当すると認定し、特約に基づく請求を認容したため、賃借人が上告した。
あてはめ
本件賃貸借は、諸般の事実関係に基づき借地法9条の一時使用目的であると認められる。この場合、同法の強行規定(更新拒絶の正当事由等)の適用が排除される。特約上の「賃貸人において必要ある場合」という文言については、私的自治の原則に基づき当事者間の合意を尊重すべきである。上告人は客観的かつ妥当な必要性が不可欠であると主張するが、一時使用目的が明らかな本件においては、そのような制限を課すべき法的根拠はなく、合意に基づく必要性の発生をもって明渡し請求は正当化される。
結論
本件賃貸借は一時使用目的の借地権であり、特約に基づき賃貸人が必要を申し出た以上、客観的妥当性の有無にかかわらず、賃借人は土地を明け渡すべきである。上告棄却。
事件番号: 昭和38(オ)235 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
準備書面及び書証の表示文言に判示のような記載があっただけでは、当該要証事実の主張があったとは見られない。
実務上の射程
借地借家法25条(旧借地法9条)の一時使用目的借地権の認定がなされる場面において、明渡し条件としての賃貸人の「必要性」を緩やかに解釈した事例である。実務上、一時使用の合意がある場合には、正当事由(同法6条等)の厳格な判断を経ることなく、特約による終了が認められやすいことを示している。
事件番号: 昭和35(オ)1066 / 裁判年月日: 昭和37年2月6日 / 結論: 棄却
地主の長男が医学修業中であり、卒業後その土地で医業を開始することを予定していたので、借地期間を右医業開始確定の時までとするため、契約にあたり、地上に建築せらるべき建物を戦災復旧用建坪一五坪のバラツク住宅と限定し、特に一時使用を条件とする旨契約書に明記されていた場合には、たとえ右開業時期が明確に定まつていなかつたため、一…
事件番号: 昭和29(オ)346 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条(現・借地借家法25条)の「一時使用」にあたるかは、賃貸借の目的、期間、地上建物の種類・構造、賃料の多寡等から客観的に判断される。本判決は、原審の認定した事実関係に基づき、本件土地の賃貸借が一時使用のためのものであると認めることが可能であると判示し、上告を棄却した。 第1 事案の概要:本…
事件番号: 昭和33(オ)874 / 裁判年月日: 昭和36年8月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法(旧借地法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、契約の目的、賃貸借の期間、建物の種類、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で本件宅地の賃貸借契約が締結された。原審は、当該契約がなされた背景、建物の利用目的、およ…
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…