判旨
地代家賃統制令の適用除外となる「一棟の延面積が30坪を超える建物」の判定において、現在の区画が一時的で将来的に一体利用が予定されている場合は、建物全体を一個の家屋として扱うべきである。
問題の所在(論点)
地代家賃統制令23条2項3号所定の「延面積が30坪を超える建物」に該当するか否かの判断において、建物の一部が区画されている場合に、これを一個の家屋として全体面積で算定できるか、それとも区分された各部分ごとに判断すべきかが問題となった。
規範
地代家賃統制令23条2項本文および3号(当時)の適用に関し、建物が一個の家屋に当たるか否かは、建物の構造、従前の使用形態、現在の区画の性質(一時的か否か)、および所有者の利用意図(一体利用の有無)を総合的に考慮して判断する。現在の区画が一時的なものに過ぎず、全体として一体的な利用が予定されている場合には、建物全体を一個の家屋として面積を算定すべきである。
重要事実
対象建物は延べ面積56坪余の二階建店舗兼住宅であり、被上告人が上告人から買い受けたものである。従前は一戸として使用されていた経緯があり、現在の内部区画は一時的なものに過ぎなかった。被上告人は明渡しを受けた後に一戸の店舗兼住宅として使用する意図を有しており、上告人もその事実を承知していた。また、店舗部分の面積についても、上告人が無断で縮小させるなどの事情があった。
あてはめ
本件家屋は、従前一戸として使用されていたこと、現在の区画が一時的であることから、物理的・機能的に一体性を有している。また、被上告人に全体を一体として使用する明確な意図があり、上告人もこれを認識していたことから、主観的側面からも一個の家屋としての実態が認められる。したがって、各区画ごとの面積ではなく、延べ面積56坪余の「一個の家屋」として評価される。この面積は同令の制限である30坪を超過している。
結論
本件家屋は、全体として地代家賃統制令23条2項3号により同令の適用を受けない一個の家屋に該当する。したがって、同令の適用はない。
実務上の射程
統制法令下の判断であるが、現代の民法や借地借家法においても、一棟の建物の一部が独立した「建物」として扱われるか、あるいは建物全体の一部に過ぎないかを判断する際の、構造上の独立性・利用上の独立性の考慮要素として参考になる。特に「一時的な区画」や「将来の一体利用の意図」が一個の建物性を肯定する方向に働く点に射程が及ぶ。
事件番号: 昭和32(オ)769 / 裁判年月日: 昭和34年7月30日 / 結論: 棄却
家屋の階下部分(床面積約五坪)が使用貸借の当初より店舗として使用し得る構造を有し、階上部分とは別個に店舗の用に供することが相当な利用方法といい得る場合に、右家屋の所有者が使用貸借の解約後店舗部分のみの無断転借人に対して請求する損害金を算定するにあたり、いわゆる公定賃料をこえる約定転貸賃料を標準としても違法ではない。