第一審判決主文に民訴第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり右判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。
控訴審判決で第一審判決の明白な誤謬を更正することの適否
民訴法194条
判旨
一棟の建物の一部を目的とする売買契約において、当該部分は物の一部にすぎないため、直ちに所有権移転の物権的効果を生ずることはない。
問題の所在(論点)
一棟の建物の一部を目的とする売買契約によって、当該部分に直接所有権移転の物権的効果が生じるか(一物一権主義の要請と物権変動の客体)。
規範
物権変動の目的物は独立した一個の物であることを要し、一棟の建物の一部を目的とする契約が締結されたとしても、その部分が区分所有権の客体となるなどの特段の事情がない限り、当然には所有権移転の物権的効果は生じない。
重要事実
被上告人の内縁の夫が、被上告人に無断で(代理権なく)店舗一棟のうち北から2戸目の約3坪の部分(間口一間半、奥行約二間)を上告人らに売却した。被上告人はこの契約に関与しておらず、追認もしていない。上告人らが当該部分を占有していたため、被上告人がその明渡しを求めた。原審は、契約の無権代理による無効を認めるとともに、仮に契約が有効であっても、物の一部については直ちに所有権移転の物権的効果が生じないとして明渡請求を認容した。
あてはめ
本件売買契約の目的物は、店舗一棟建坪15坪のうちの約3坪(板囲いの部分)であり、物理的な建物の一部にすぎない。このような物の一部については、取引の対象となり得ても、独立した排他的な支配権である所有権が直ちに成立し移転するという物権的効果は生じ得ないと解される。したがって、上告人らは本件建物部分の所有権を取得したとは認められず、所有者である被上告人に対する明渡義務を免れない。
結論
建物の一部についての売買契約は、直ちに所有権移転の物権的効果を生じさせない。したがって、上告人らの占有権原は認められず、明渡請求は正当である。
実務上の射程
一物一権主義の原則を確認する事案である。答案上は、不動産の一部譲渡において、分筆登記や構造上・利用上の独立性(区分所有)を具備しない限り、対抗問題以前に物権変動そのものが排他的には完成しないことを論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和32(オ)99 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除が権利の濫用に該当するか否かは、賃料受領拒絶や立退要求等の事実のみをもって直ちに判断されるものではなく、諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)が賃貸借契約を解除した事案において、上告人(賃借人)側は、被上告人による賃料受領の拒絶や、不当な立退…