判旨
家屋の敷地に附随する土地が野菜栽培に使用されていても、それが便宜的措置にすぎない場合は農地法上の「農地」に該当しない。また、賃料統制額の改定があった場合、特段の事情がない限り、当事者間には改定後の統制額による賃料増額の合意が成立したものと推認される。
問題の所在(論点)
1.建物の敷地に附随しつつ一部が野菜栽培に供されている土地が、農地法上の「農地」に該当するか。2.法令上の賃料統制額が改定された場合、当事者間に増額後の賃料による合意が成立したと認められるか。
規範
1.農地法上の「農地」該当性は、土地の客観的な状況のみならず、家屋利用への附随性や利用の目的・態様を総合して判断すべきである。2.地代家賃統制令下において、従来統制額を賃料としていた当事者間では、告示改正により統制額が増額された場合、特段の事情のない限り、改正後の統制額に従う旨の意思(賃料増額の合意)があったものと推認するのが相当である。
重要事実
上告人は、建物の賃貸借契約の解除に基づく物件返還を求められた。係争地(208坪)のうち約100坪が野菜栽培に使用されていたため、上告人はこれが農地法上の「農地」にあたり、同法の適用を受けると主張した。また、地代家賃統制令による統制額が改定された際、賃料増額の合意は成立しておらず、賃料債務は発生しないとも主張した。
あてはめ
1.本件土地は元来、家屋の敷地として家屋使用のために附随せしめられたものであり、野菜栽培は便宜的措置にすぎない。したがって、実質的に家屋利用の一環といえ、農地法上の「農地」には当たらない。2.当時の統制額は諸物価に比して極めて低廉であった。このような状況下で、従来から統制額を賃料としていた当事者は、改正告示があればこれに従う意思を有し、賃借人も承諾するのが通常といえる。本件では特段の事情の主張もないため、増額の合意が推認される。
結論
1.本件土地は農地法上の「農地」にあたらず、同法の適用はない。2.改定後の統制額に基づく賃料債務は有効に発生しており、賃貸借契約の解除及び物件の返還請求は認められる。
事件番号: 昭和33(オ)590 / 裁判年月日: 昭和34年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の農地に該当するか否かは、土地の客観的な現況によって判断されるべきであり、もともと宅地であった土地を一時的な約束で家庭菜園として利用させているに過ぎない場合は、農地には当たらない。 第1 事案の概要:本件係争地は、もともと所有者Dの家屋に附属する純然たる宅地であった。しかし、戦災により家屋…
実務上の射程
農地法の適用範囲を実質的に画定する際の判断基準として活用できる。また、契約当事者の黙示の意思表示の推認において、当時の経済情勢や法規制(統制額)の性質を考慮する合理的な解釈手法を示している。
事件番号: 昭和34(オ)42 / 裁判年月日: 昭和35年3月17日 / 結論: 棄却
小学校の学校農園のなかに建物の敷地と空地がある場合、右農園が肥培管理されており、建物は農園に附随した教室、農園管理者の宿舎、農具倉庫などであり、空地は児童の集合場所、通路等に使用され、その使用目的並びに客観的使用状況において学校農園として不可分の一体を形成しているときは、右建物の敷地および空地も農地と認めて妨げない。
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…