判旨
農地法上の農地に該当するか否かは、土地の客観的な現況によって判断されるべきであり、もともと宅地であった土地を一時的な約束で家庭菜園として利用させているに過ぎない場合は、農地には当たらない。
問題の所在(論点)
戦災により家屋が焼失した宅地を、一時的な約定で家庭菜園として貸し出している場合、当該土地は農地法上の「農地」に該当するか。
規範
ある土地が農地法上の「農地」に該当するか否かは、単に登記簿上の地目や当事者の主観的な意図のみによるのではなく、当該土地の客観的な現況、利用の実態、および賃貸借等の設定経緯を総合的に考慮して判断すべきである。具体的には、耕作(土地に労費を加えて肥培管理を行い作物を栽培すること)を目的とし、かつ継続的に農地としての実質を備えているか否かによって決せられる。
重要事実
本件係争地は、もともと所有者Dの家屋に附属する純然たる宅地であった。しかし、戦災により家屋が焼失したため、Dは他へ避難することとなった。その際、Dが再び当該土地に戻ってくるまでの約束で、上告人に対し、家庭菜園として利用させるために一時的に賃貸したものである。上告人はこの土地において耕作を行っていたが、地目は宅地のままであり、食糧供出の対象にもなっていなかった。
あてはめ
本件係争地は、もともと家屋に附属する宅地であり、賃貸の経緯も、所有者が戻るまでの「一時的な家庭菜園としての利用」に限定されている。このような事情に鑑みれば、当該土地は「一定の土地に労費を加えて肥培管理を行ってきた土地」や「それによって作物を栽培することを目的とした土地」という農地の本質的性格を備えているとはいえない。したがって、現に作物が栽培されているという側面があっても、それは一時的な態様に過ぎず、客観的に農地へと転換されたものとは評価できない。
結論
本件係争地は農地法上の農地には当たらない。したがって、農地法に基づく制限(許可等)の適用を受けるものではない。
実務上の射程
農地の定義に関する「現況主義」を具体化した判例である。一時的な家庭菜園利用や、本来の地目が宅地である場合の農地認定を否定する際の論拠として活用できる。特に、利用の「一時性」や「経緯」が農地該当性の判断において重要な要素となる点に留意すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)42 / 裁判年月日: 昭和35年3月17日 / 結論: 棄却
小学校の学校農園のなかに建物の敷地と空地がある場合、右農園が肥培管理されており、建物は農園に附随した教室、農園管理者の宿舎、農具倉庫などであり、空地は児童の集合場所、通路等に使用され、その使用目的並びに客観的使用状況において学校農園として不可分の一体を形成しているときは、右建物の敷地および空地も農地と認めて妨げない。
事件番号: 昭和27(オ)725 / 裁判年月日: 昭和29年11月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】家庭菜園は、農地調整法(現:農地法)にいう「農地」には該当せず、また借地法(現:借地借家法)上の借地権の成立が否定される場合には、同法の更新等の規定は適用されない。 第1 事案の概要:上告人らは、対象となる土地について家庭菜園として利用していた。上告人らは、当該土地の利用について借地法上の保護(更…
事件番号: 昭和33(オ)874 / 裁判年月日: 昭和36年8月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法(旧借地法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、契約の目的、賃貸借の期間、建物の種類、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で本件宅地の賃貸借契約が締結された。原審は、当該契約がなされた背景、建物の利用目的、およ…