昭和八年頃所有者において建物の敷地にするために水田を埋め立てた土地六八坪を空地のまま放置するうち、その隣家に居住する者が所有者の承諾の下にこれを自家用野菜の栽培のために耕作して今日に至り、その間対価の支払をなしたことがあつても、耕作者は他に生業をもち、右土地以外に土地を耕作せず、終始農会の会員ではなく収穫物の供出をしたこともないような場合には、右の土地は旧農地調整法第二条にいう農地に該当しないと解するのが相当である。
旧農地調整法第二条にいう農地にあたらないとされた事例。
農地調整法(昭和20年法律64号による改正後のもの)2条
判旨
建物敷地とする目的で埋め立てられ、空地として放置されていた土地を家庭用菜園として一時的に利用しているに過ぎない場合、その土地は旧農地調整法2条(現農地法2条1項)にいう「農地」には該当しない。
問題の所在(論点)
建物敷地として造成された土地が、自家用野菜の栽培のために利用されている場合、農地法(旧農地調整法2条)上の「農地」に該当するか。
規範
ある土地が農地法上の「農地」に該当するか否かは、その土地の客観的な事実状態によって判断されるべきであるが、単に耕作されているという事実のみならず、その土地の本来の目的、利用の態様、耕作者の職業・目的等の諸般の事情を総合的に考慮して判断する。
重要事実
元所有者Dは、本件土地(約68坪)を建物敷地とする目的で水田から埋め立てたが、適当な建物がなかったため空地のまま放置していた。隣人に居住する上告人は、昭和13年頃から所有者の承諾を得て、自家用野菜の栽培目的で耕作を開始し、対価を支払うこともあった。しかし、賃貸借に関する書面は作成されておらず、上告人は小料理屋および鍛冶業を本業とし、農会への加入や収穫物の供出実績もなかった。
事件番号: 昭和33(オ)590 / 裁判年月日: 昭和34年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の農地に該当するか否かは、土地の客観的な現況によって判断されるべきであり、もともと宅地であった土地を一時的な約束で家庭菜園として利用させているに過ぎない場合は、農地には当たらない。 第1 事案の概要:本件係争地は、もともと所有者Dの家屋に附属する純然たる宅地であった。しかし、戦災により家屋…
あてはめ
本件土地は本来、建物敷地とする目的で造成されたものであり、一時的に空地であったため耕作が許容されたに過ぎない。また、利用目的も家庭用菜園(自家用野菜の栽培)に限定されており、上告人は非農業従事者であって農業経営の意思も認められない。このような利用実態は、農業生産の基盤としての農地性を備えるものとは評価できず、土地の主たる目的は依然として宅地候補地としての性格を維持しているといえる。
結論
本件土地は農地法上の農地には該当しない。したがって、農地としての規制(転用制限や解約制限等)は適用されない。
実務上の射程
土地の「現況」が耕作されていても、それが宅地等への転用を前提とした一時的な家庭菜園的な利用である場合には、農地法の適用を否定する根拠として本判例を引用できる。特に都市近郊の小規模な耕作地の法的性質を争う場面で有効である。
事件番号: 昭和32(オ)630 / 裁判年月日: 昭和33年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】家屋の敷地に附随する土地が野菜栽培に使用されていても、それが便宜的措置にすぎない場合は農地法上の「農地」に該当しない。また、賃料統制額の改定があった場合、特段の事情がない限り、当事者間には改定後の統制額による賃料増額の合意が成立したものと推認される。 第1 事案の概要:上告人は、建物の賃貸借契約の…
事件番号: 昭和27(オ)725 / 裁判年月日: 昭和29年11月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】家庭菜園は、農地調整法(現:農地法)にいう「農地」には該当せず、また借地法(現:借地借家法)上の借地権の成立が否定される場合には、同法の更新等の規定は適用されない。 第1 事案の概要:上告人らは、対象となる土地について家庭菜園として利用していた。上告人らは、当該土地の利用について借地法上の保護(更…