判旨
婚姻予約の解消に際し不履行の場合の慰謝料額をあらかじめ定めることは、直ちに公序良俗に反するものではなく、その合意が当事者の同意に基づき、金額が過大でなければ有効である。
問題の所在(論点)
婚姻予約の解消に伴う慰謝料支払の約定(賠償額の予定)が、婚姻の自由を不当に制限するものとして公序良俗(民法90条)に反し無効となるか。
規範
婚姻予約に際し、不履行の場合を想定して慰謝料額を定めることは直ちに公序良俗(民法90条)に反するものではない。また、不履行の帰責性の有無にかかわらず婚姻予約解消の条件としてなされた支払の約定は、当事者の同意に基づくものであり、その金額が公序良俗に反するほど高額でない限り、有効な合意として認められる。
重要事実
上告人と被上告人は、婚姻予約の解消に際して調停を行い、慰謝料として26万円を支払う旨の約定を成立させた。この約定は、厳格な意味での慰謝料請求権の成否にかかわらず、婚姻予約解消の条件として各代理人間であらかじめ妥結された案に基づいていた。上告人はこの案に沿って調停を成立させることに同意したが、後に当該約定は婚姻の自由を制約するものであり公序良俗に反して無効である等と主張して争った。
あてはめ
本件の慰謝料支払の約定は、婚姻予約解消の条件としてなされたものであり、法的な損害賠償責任の有無を問わず当事者の合意により成立している。また、上告人は代理人間の妥結案に対して自ら同意を与えており、意思決定の自由が確保されていたといえる。さらに、約定された26万円という金額についても、当時の社会通念に照らして公序良俗に反するほど過大であるとは認められない。したがって、本件約定が公序良俗に反すると解すべき事情は存しない。
結論
本件調停における慰謝料支払の約定は有効であり、公序良俗に反して無効であるとはいえない。
実務上の射程
婚姻予約の不履行に関する違約金約定の有効性を肯定した重要判例である。答案上は、婚姻の自由(憲法24条、公序良俗)との関係で、違約金が婚姻を不当に強制するほど高額であるか、または解消の自由を実質的に奪うものであるかを判断基準とする際の基礎として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)764 / 裁判年月日: 昭和34年7月3日 / 結論: 棄却
当事者の意思に基く届出を欠いた婚姻については、第三者もその利益があるかぎり無効確認の訴を提起し得べく、右第三者が当該婚姻届出書類を偽造した本人であるからといつてこれを別異に解すべきではない。