判旨
当事者が停止条件付贈与であると主張し、相手方がこれを否認して争っている場合、裁判所が当事者の主張しない「負担付贈与」であると認定することは、弁論主義に反しない。
問題の所在(論点)
当事者が「停止条件付贈与」の存否を争っている場合に、裁判所が当事者のいずれも明示的に主張していない「負担付贈与」であると認定することは、弁論主義(第一テーゼ:主張責任)に抵触し、不意打ちとなるのではないか。
規範
裁判所は、請求原因事実について当事者間に争いがある場合、証拠資料に基づき、当事者の主張とは異なる法的性質(法律構成)を認定することができる。具体的には、原告が停止条件付贈与を主張し、被告がこれを否認している状況下で、裁判所が当該契約の実態を負担付贈与であると認定することは、当事者の主張に現れない事実の認定として許容される。
重要事実
原告(上告人)らは、被告(被上告人)との贈与契約について、親身になって扶養することを条件とする停止条件付贈与であると主張した。これに対し、被告は「契約通り扶養してきたが、その後相手が扶養に応じなくなったため、条件不成就の責任は被告にない」と述べ、停止条件付贈与である点について実質的に否認し争った。原審は、証拠に基づき本件契約を「負担付贈与」であると認定し、原告の請求を棄却したため、上告人が弁論主義違反等を理由に上告した。
あてはめ
本件では、原告が停止条件付贈与に基づき無効を主張し、被告がこれを否認して争っている。このような請求原因事実に争いがある場面において、裁判所が証拠に照らして契約の性質を検討した結果、停止条件ではなく負担を付した贈与であると判断することは、事実認定の範囲内である。被告による「扶養の責任は果たした」等の反論は停止条件の成就を争う趣旨の否認に含まれ、裁判所がこれとは異なる「負担付贈与」という法的構成を採ることは、当事者の主張に縛られない裁判所の専権に属する。したがって、弁論主義違反の不当はない。
結論
裁判所が当事者の主張しない負担付贈与と認定することは適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
弁論主義における「主要事実」の認定に関する射程を示す。当事者が主張する契約の法的性質(条件か負担か)が争われている場合、裁判所は証拠に基づき、当事者が明示しない中間的な法的性質を認定できる。答案上は、弁論主義の適用範囲や、裁判所による釈明権・事実認定の限界が問題となる場面で活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)481 / 裁判年月日: 昭和41年6月17日 / 結論: 棄却
民訴法第三八七条は、判決の成立手続が違法な場合を規定しているのであつて、判決内容が弁論主義に違背している場合には適用されない。
事件番号: 昭和28(オ)230 / 裁判年月日: 昭和30年4月21日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】当事者が抗弁として主張していない事実(示談による土地使用権の存在)を裁判所が認定し、それを根拠に請求を棄却することは、弁論主義に違反し許されない。 第1 事案の概要:上告人(所有者)が被上告人らに対し、建物収去土地明渡を請求した。被上告人らは「賃借権譲渡の承諾を受けた」との抗弁を主張したが、原審は…