判旨
当事者が契約解除の有効性を争い、その原因となる事実(代金債務不履行)や解除通知の事実が主張・立証されている場合、裁判所がこれらに基づき解除を有効と判断することは、弁論主義(民事訴訟法186条、現146条等参照)に反しない。
問題の所在(論点)
当事者が契約解除の有効性を争っている状況において、裁判所が債務不履行および解除の事実を認定して解除を有効と判断することが、当事者の主張しない事実に基いて判断したものとして弁論主義(旧民訴法186条)に抵触するか。
規範
裁判所は、当事者が主張しない事実を判決の基礎とすることはできない(弁論主義の第1テーゼ)。しかし、主要事実そのものが直接主張されていない場合であっても、訴訟全体の過程において当事者がその事実の存否を争い、実質的に審理の対象となっているといえる場合には、当該事実を認定して判決の基礎とすることは弁論主義に反しない。
重要事実
上告人とDとの間で売買契約が成立した。被上告人は、上告人の代金債務不履行を理由として、昭和30年4月10日頃に当該契約を解除した旨を主張した。これに対し上告人は、同年5月7日付の内容証明郵便により解除の通告を受けた事実は認めた上で、解除の効力のみを争っていた。原審は、上告人の債務不履行および契約解除の事実を認定し、解除を有効と判断した。
あてはめ
本件では、被上告人が上告人の代金債務不履行および契約解除の主張を行っており、上告人も解除通知を受けた事実を認めた上でその効力を争っている。このような訴訟経過に照らせば、売買契約、代金債務不履行、契約解除に関する事実は、当事者間において実質的に主張・立証の対象となっていたといえる。したがって、裁判所がこれらの事実に基いて契約解除を有効と判断したことは、当事者の主張しない事実を基礎としたものとはいえず、弁論主義に違反しない。
結論
原審が代金債務不履行による契約解除を有効と判断したことに弁論主義違反の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
契約解除の有効性が争点となる事案において、解除原因(債務不履行等)や解除の意思表示に関する事実が訴訟資料として現れている場合に、裁判所がそれらを基礎に法的判断を下す際の許容範囲を示すものとして活用できる。答案上は、主要事実の主張の有無が問題となる場面で、当事者の審理態様から「実質的な主張」を認める際の根拠となり得る。
事件番号: 昭和38(オ)273 / 裁判年月日: 昭和38年12月17日 / 結論: 破棄差戻
相当期間を経過しても滞納地代を支払はないときは賃貸借の解除権が発生する旨の合意が成立した事実を認定したうえ、相当期間内に右支払をしなかつたことにより賃貸借契約は解除されたと判断した場合に、右合意成立の事実が当事者によつて主張されていない以上、当事者の主張しない事実に基づいて判決した違法があるといわざるをえない。
事件番号: 昭和35(オ)53 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法1条3項の権利濫用について、契約解除権の行使が権利の濫用にあたると解すべき根拠となる事実が認められない場合には、当該解除は有効である。原審が確定した事実関係の範囲内では、解除権の行使を不当とする事情がなく、権利濫用には当たらないとした判断を維持した。 第1 事案の概要:本件は契約の解除権行使の…