判旨
入会権の内容として樹木一切の伐採取得を主張していた者が、控訴審において秣刈取や薪採取の限度で権利を認められたとしても、それは請求の変更や新たな反訴の提起には当たらない。また、入会権の内容は必ずしも別個の慣行源を要するものではなく、裁判所が証拠に基づきその範囲を特定することは可能である。
問題の所在(論点)
入会権の内容として主張していた収益権限の一部のみが認められた場合、それは訴えの変更にあたるか。また、入会権の具体的態様(薪採取等)ごとに別個の慣行源が必要とされるか。
規範
入会権(民法263条、294条)の内容は、地域の慣習に基づき画定されるものである。請求の基礎に変わりがない限り、当初主張していた広範な収益権限の一部が審理の結果として限定的な態様(秣刈取、薪採取等)で認められることは、訴えの変更(民事訴訟法232条、現143条)には当たらず、同一の請求の範囲内における一部認容として許容される。
重要事実
被上告人(入会権者)らは、本件係争地において緑肥用・薪炭用・建築用等の樹木一切を伐採取得する入会権を主張した。第一審がこれを否定したため、被上告人らは控訴。控訴審は、主張された内容のうち「秣(まぐさ)刈取」および「薪採取」の限度においてのみ入会権を肯定し、上告人(所有者)に対して行使妨害の禁止を命じた。これに対し上告人は、当初の主張と認容された権利は異質であり、請求の変更の手続きを経ていない等の手続違背を主張して上告した。
あてはめ
被上告人らが主張した「樹木一切の伐採取得」という権利主張に対し、原審が「秣刈取、薪採取」の限度でこれを是認したことは、主張された入会権の内実を証拠に基づき合理的に限定したに過ぎない。立木伐採の入会権と秣・薪炭採取の入会権とは、必ずしも別個の慣行源から発する異質なものと解すべき筋合いはなく、実質的に同一の慣習上の権利の範囲を画定したものである。したがって、これは請求の基礎に変更があるものとは認められず、手続上の違法はない。
結論
入会権の一部認容は適法であり、上告を棄却する。原審が認定した秣刈取・薪採取の限度での入会権行使の妨害禁止命令は維持される。
事件番号: 昭和34(オ)112 / 裁判年月日: 昭和35年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】入会権の内容および制限の有無は、当該入会地の沿革、地形、地勢、および長年の慣行に基づき、各事案における証拠関係を総合して個別的に判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人ら(部落)は、本件係争地が自村の所有する山であり、永年にわたり入会ってきた歴史があることから、その入会権の内容には制限がな…
実務上の射程
入会権の存否や内容が争われる事案において、原告側が主張する権利内容が過大であっても、裁判所が証拠に基づきその一部を認めることが可能であることを示している。答案上は、入会権の内容特定(慣習の立証)の文脈や、一部認容判決の可否という訴訟法上の論点と絡めて引用することが想定される。
事件番号: 昭和29(オ)769 / 裁判年月日: 昭和32年9月13日 / 結論: 破棄差戻
入会地のある部分を「分け地」と称して部落民のうちの特定の個人に分配し、その分配を受けた個人がこれを独占的に使用収益し、自由に譲渡することが許される慣行が存するときは、特段の事情のない限り、「分け地」については入会権の存在を否定すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)549 / 裁判年月日: 昭和34年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実体上の権利に基づかない増歩登記(地積増加の登記)は無効であり、それにより不動産所有権を取得したとは認められない。また、不法行為者は民法177条にいう「第三者」に該当しないため、真実の所有権者は登記なくして所有権を対抗できる。 第1 事案の概要:上告人は、係争土地(無地番の山林)が隣接する自己所有…
事件番号: 昭和34(オ)212 / 裁判年月日: 昭和36年3月16日 / 結論: 棄却
所有権確認訴訟の係属中、訴訟の目的たる権利を原告から譲り受けたことを主張して訴訟参加をした者が、第二審で勝訴し、被告が参加人を相手方として上告の申立をしたときは、原告のためにもその効力を生じ、同人は被上告人たる地位を取得したものと解すべきである。