判旨
調停申立書に契約解除の意思表示が記載され、その副本が相手方に送達された場合、たとえ調停が不調に終わったとしても、解除の効力は有効に発生する。
問題の所在(論点)
解除の意思表示が記載された調停申立書等の副本の送達により解除の効力が発生するか。また、その後の調停不成立が解除の効力に影響を及ぼすか。
規範
契約解除の意思表示は、相手方に対する意思表示によってなされる(民法540条1項)。この意思表示は、書面が相手方に到達した時点で効力を生じる(同法97条1項)。調停申立書という訴訟上の手続に関連する書面であっても、そこに解除の意思が明示され、副本の送達により相手方がその内容を了知し得る状態に置かれれば、実体法上の解除の効力が発生する。この効力は、その後の調停手続の成否といった手続的経過に左右されない。
重要事実
上告人Aに対し、解除の意思表示が記載された調停申立書の副本が送達された。この事実は当事者間に争いがない。しかし、当該調停手続自体は、その後に不調(不成立)に終わった。上告人側は、調停が不調に終わった以上、申立書による解除の効力も認められない旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、解除の意思表示が含まれる調停申立書副本が相手方に送達された事実は争いがない。この送達により、解除の意思表示は相手方に到達したといえる。調停不成立は、あくまで調停手続という紛争解決手続が終了したことを意味するに過ぎず、送達によって既に発生した実体法上の意思表示の効力を遡及的に消滅させる理由にはならない。したがって、副本送達時に解除の効力が有効に発生していると判断される。
結論
調停申立書副本の送達により契約解除の意思表示の効力が発生し、調停不調によりその判断が左右されることはない。上告棄却。
実務上の射程
訴状や調停申立書の副本送達による意思表示(解除や相殺等)の到達を認める実務上極めて重要な判例。訴訟や調停が取り下げられたり不成立になったりしても、一度到達した実体法上の意思表示の効力は維持されるという原則を示す。答案上は、催告や解除の到達時期を認定する際の論拠として利用できる。
事件番号: 昭和33(オ)895 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
調停申立が取り下げられても、その調停申立による催告の効力は当然には消滅しない。