判旨
公職選挙法上の「選挙の結果に異同を及ぼす虞」の有無は、原則として無効投票数と得票差の比較により判断すべきであり、代理投票の手続違背があっても、得票差が著しく大きい場合には選挙の結果に異同を及ぼす虞があるとは認められない。
問題の所在(論点)
代理投票の手続に重大な違法(無効票の存在)がある場合において、得票差がその無効票数を大幅に上回るときでも、公職選挙法205条1項の「選挙の結果に異同を及ぼす虞」が認められるか。
規範
公職選挙法205条1項にいう「選挙の結果に異同を及ぼす虞」があるとは、原則として、選挙管理の規定に違反する事実があり、その違法を除去して正当な投票数を計算し直した場合に、当選人が得票数において次点者と逆転し、または逆転する可能性がある場合を指す(数的計算主義)。選挙管理が全体として著しく不公正であり、正当な管理がなされれば別な結果を生じたであろうと推定される特段の事情がない限り、形式的な票数の計算によって判断すべきである。
重要事実
ある選挙において、投票管理者が立会人の立ち会いもなく自ら代理投票を行った無効票が11票存在した。しかし、当選者と落選者の得票差は1800余票に達していた。また、鑑定の結果、特定の補助者が代理投票を行った形跡はあるものの、投票の抜き取りや不正投入の事実は認められず、単に投票録への記載漏れがあるにとどまっていた。
あてはめ
本件において、無効とされる代理投票は11票にすぎない。これに対し、当選者と落選者の得票差は1800余票と著しく大きく、仮に当該無効票をどのように扱ったとしても当選人の地位に影響を及ぼすことはない。また、投票録の記載漏れや立会人の不在という手続的瑕疵はあるものの、投票の抜き取りや混入といった不正は否定されており、選挙管理が全体として著しく不公正であったと推定すべき根拠も認められない。したがって、客観的な数値に基づき、選挙の結果に影響を与える可能性は否定される。
結論
当選人と落選人の得票差が無効票数を著しく上回る本件においては、選挙の結果に異同を及ぼす虞があるとは認められない。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、手続違背(違法)が認定された後、それが「結果に異同を及ぼす虞」という取消・無効原因にあたるかを検討する際の基準となる。特に代理投票の瑕疵や投票録の不備など、質的な不正が疑われる場面であっても、原則として数的計算による判断(逆転の可能性)が優先されることを示す射程の広い判例である。
事件番号: 昭和32(オ)708 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙手続に法令違反がある場合であっても、それが選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないときには、当該選挙は無効とはならない。投票箱の空虚確認漏れ等の手続上の瑕疵は、実質的に公正が担保されていれば選挙無効の原因を構成しない。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、複数の手続上の問題が指摘された。具体…
事件番号: 昭和41(行ツ)59 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
一 不在者投票手続における投票の立会人は、当該市町村の選挙人名簿に登録された者一名のみで足りる。 二 不在者投票管理者が不在者投票を直ちにその選挙人の属する投票区の投票管理者に送致しなかつたとしても、それが投票所閉鎖時刻までに送致されている以上、選挙の効力に影響しない。 三 選挙人名簿に多数の無資格者が誤載されていたと…